黄瀬×テツナ(大学時代)

□密着24時
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黒子は疲労が詰まった息を吐きながら体を伸ばした。
ずっと机に向かっていた体はすっかり固まってしまい、動かす度に重い音を立てる。
「お疲れっスね」
「疲れましたー」
両腕を上げて仰け反ったまま、労いの声の方へ体を倒す。背後のソファーに座った黄瀬は、黒子の体重を受け止めて笑った。
「レポートはまだかかりそうっスか?」
「もう少しですがもう無理です。休憩します」
「うん。そうしなさい」
緩く髪を撫でていた黄瀬の手は頭の下に移動して、確かめるように首から肩に触れた。
「あー…ガチガチっスね」
少し強めに押されると、肩に乗っかっていた重みが薄れる。
今度は心地好さからため息が出た。
「マッサージしてあげようか」
提案に黒子は視線だけを背後に遣る。
「コピー済みですか?」
「ちゃんとはしてないけど…」
ふふん、と勝ち誇った笑みが向けられる。
「黒子っちよりは、上手いと思うよ」
「私は黄瀬くんの笑いのツボをおさえているだけです」
「誰が上手いことを言えと」
黄瀬はあくまでも反抗的な態度を取る。
黒子は躊躇いなく黄瀬の脇腹に手を伸ばした。
「あっ…ごめ、なさっ…や、やめて…っ!」


「どうせなら本格的にやろうか」
言って黄瀬が持ってきたのは、乳白色のボトルだった。
「なんですか、それ」
「マッサージオイルだって」
頂き物だというボトルの説明書きに目を通して、黄瀬は黒子を寝室のベッドまで連れて行った。
「上脱いで」
言われるまま上着を脱ぎ落とそうとして、黒子は思い留まる。
「一応聞きますけど、下心はありませんよね?」
「ないっス」
「…本当は?」
「ちょっとだけあるっス」
即答する正直者の頭を撫でる。
嬉しそうに笑う黄瀬は忠犬の顔をしているし、脱ぐといってもキャミソール一枚は着ている。問題は無いだろう。
黒子は逆らわずに服を脱いでベッドにうつ伏せになった。
「楽にしててね」
オイルを塗った黄瀬の手が肩口に触れる。ふわりとハーブの薫りがする。
首、肩、腕へと手は滑る。纏っていた疲労が解かれていく。それは、思わず微睡むほどに優しい。
「気持ち良い?」
囁きは、体の奥の方に落ちた。黄瀬の手が触れたところに燻る熱が生まれる。
黒子は体を仰向けに返した。
正面から見つめ合った黄瀬は数回瞬いてから、緩やかに微笑む。
「なに?」
「………」
黒子が答えずにいると、向かい合ったままでマッサージを再開された。体幹から末端へとなぞっていく手は、指の先を丁寧に包んで絡めとる。両手に体重を乗せられれば、まるで組み伏せられているかのようだ。
早まる鼓動を見透かしたように、黄瀬が笑った。
「下心があるのは、黒子っちの方じゃないスか?」
「…そうですね」
手を動かせば、指を解かれる。自由になった手をのし掛かる体に伸ばす。首に触れて、引き寄せる。
「黄瀬くんに触られるのは、気持ち良いです」
距離を縮めて囁けば、笑い声を漏らした唇が触れ合う寸前で問いを作った。
「…もっと?」
黄瀬の手は逆に腕から肩へと上る。唇の距離は、更にゼロへと近づく。
もっと。黒子の望みは音になることはなかった。


「おお…」
自らの腕を撫でた黒子の口からは、思わず驚きの声が上がった。
「肌が別人です」
「そんな大袈裟な」
笑って同じように腕に触れるなり、黄瀬の目の色が変わる。
「やだ、なにコレすごい」
黄瀬は真剣にマッサージオイルのボトルに見入る。黒子は後ろ姿に近付き、腰に腕を回した。
「じゃあ次は私がマッサージしてあげますね」
「いや、遠慮し…あっ、そこ、駄目…っ!」


fin 2013/1/29

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