黄瀬×テツナ(大学時代)

□1月31日
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「明日は黒子っちの誕生日っスね」
「そうですね」
「絶対に仕事休んでみせるから」
「無理しなくて良いですよ」
「休むから」
「…忙しいんですよね?最近顔色悪いですよ」
「休むから」
「………」
「この命に代えてでも」
「黄瀬くん、重いです」


1月31日


―――誕生日おめでとう。
それが、彼の最後の言葉だった。
「本当に命に代えてどうするんですか…」
ぼやきに答える声は無い。
日付が変わって直ぐに帰宅した黄瀬は、一言祝福の言葉を残して倒れた。
何事かと一瞬焦ったものの、外傷は無いし熱もほとんど無い。どうやらただの過労らしいが、半日経った今も彼が目覚める様子は無い。
黒子はそっと黄瀬の髪を撫でた。
大袈裟でも何でもなく、黄瀬が一日休みを取るのは命懸けになってしまった。丸一日一緒にいられるなんて、いつ以来だろうか。
黒子はベッドの端に顔を伏せた。
早く起きないかな。祈りが通じたかのように、黄瀬が身動ぐ。
「…黒子っち…」
眠りに蕩けた琥珀色の瞳がゆっくりと意思を取り戻す。黄瀬は上体を起こした。
「…今何時?」
「お昼くらいです」
「そっか…」
長く息を吐いて、黄瀬は苦笑した。
「ごめんね。プレゼント用意できなかったから、買い物に行こうと思ってたんだけど…」
まだ起き上がれるほど回復はしていないのだろう。黒子だって、あんな衝撃的な倒れ方をした人をその日のうちにつれ回そうという気にはならなかった。
「いいです」
黒子はベッドに座って黄瀬と向き合った。
「何もいらないから、今日は黄瀬くんを独り占めさせてください」
意外さに丸くなっていた目が、ふっと穏やかに細められる。黄瀬は腕を広げた。
「…どうぞ」
腕の中に飛び込めば、しっかりと抱きしめられる。
二人でいられることは、どんなプレゼントを貰うよりも贅沢だ。
だけど、今日くらいは良いだろう。
今日は無条件で幸せを貰える、特別な日だから。

「誕生日おめでとう」


fin 2013/1/31

フリリク『黒子誕生日話』
明音様、リクエストありがとうございました!

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