黄瀬×テツナ(大学時代)

□責任取って
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絶えず聞こえていた水音が止まる。と同時に自分を呼ぶ声がした。
「黒子っちー」
「はい」
「ごめん、石鹸取って」
反響する声に従い石鹸を持った手でノックをすれば、すぐに浴室のドアが開く。
「ありがとう」
立ち込める湯気の中、僅かに覗いた黄瀬の濡れた髪に、肌に。
心臓が大きく反応した。


責任取って


有り体に言うならばムラムラした。
温めのシャワーを浴びながら、前回そういうことをしたのはいつだったか考える。
多分、1ヶ月は前だったと思う。
一緒に暮らしているとはいえ、相変わらず多忙な黄瀬と過ごせる時間は短く、家にはほとんど寝るためだけに帰るようになっていた。
疲れている黄瀬がただ抱き締める以上のことを求めることもなく、自覚していなかったが多分自分は欲求不満なのだ。
風呂でも洗い流せない欲望を抱えて途方に暮れる。
黒子がねだれば黄瀬が拒否することはまずないだろう。でもそれには漏れなく嬉しそうな笑顔がついてくる。
なんだかそれは癪だった。
求める体と求めたくない心を葛藤させながらリビングに戻る。
「黄瀬くん…」
ソファーの上で眠りこける黄瀬を見たとき、黒子の中の獣が目覚めた。


役に立ちすぎて黒子にまで可愛く見えてきたファー付きの手錠を手に黄瀬を見下ろす。
黄瀬の眠りは浅い。やるからには躊躇いなく手早く一瞬で終わらせるしかない。
お腹の上に無造作に置かれた黄瀬の両手を手錠で戒める。
「………へ?」
黄瀬が目を開けるが間一髪黒子の方が早く、手錠についている鎖をラックにくくりつけた。
これで黄瀬は両腕を上げた体勢で、体を起こすことすら叶わない。
「…あ…の…黒子っち…?」
状況に全くついていけず目を丸くする黄瀬は無防備そのもので、黒子の嗜虐心を悪戯に煽った。
「な…何する気っスか…?」
ナニしてやるぜ、とはさすがに言えず、黒子は無言で黄瀬の上にのしかかるとシャツのボタンを外しにかかった。
「ちょっ…ちょっと待って何…っ!」
制止の声を聞かずに開いたシャツの下に口付ける。喉元に近付けば、黄瀬が息を飲んだのが伝わってきた。
少し体を起こして、改めて捕らえた体を見下ろす。
重々承知はしていたが、黄瀬はどこもかしこも見惚れるくらい綺麗だった。
生まれ持ったものもあるのだろうが、それ以上のプロ意識の高さを伺わせる。
痕を残さないよう細心の注意を払って滑らかな肌に舌を這わせる。
抵抗を諦めたらしい黄瀬は顔を背けるだけで何も言わない。
いくら自由を奪っているとは言え、これだけの体格差があれば黄瀬は容易に黒子を振りほどける。でもそれをしないのは、この不安定な体勢で下手に動いて黒子が落ちることを恐れているからだ。体勢を崩した体を受け止めることのできる両腕は、黒子が封印してしまっている。
黄瀬の気遣いは嬉しくて、その余裕は悔しい。
黒子は意を決してスラックスに手をかけた。
「黒子っち!ホントにそれ以上はダメだって…!」
さすがに黙っていられず、黄瀬が声をあげる。だが焦る様は今の黒子をエスカレートさせるだけだった。
「ダメ…っ…」
まだほとんど反応していないものに口付ければ、言葉だけの抵抗も止まる。
黒子は目の前の熱を育てる行為にだけ集中した。
自分は二の次で、黒子を最優先とする黄瀬が口を使う行為など求めてくるはずもなく。
黒子の愛撫はたどたどしく物足りないものだっただろうけれど、それでも確実に熱量を増していく手の中のものが愛しかった。
音を立てて先端に口付け、黄瀬の反応を窺う。
黄瀬は熱から逃れるように腕に顔を埋めている。切なく伏せられた目や、赤みが差した頬や、僅かに上がった息は挑発にしか見えなかった。もう我慢も限界だった。
「…黒子っち…?」
不安気に呼ぶ可愛い彼氏の目元にキスをする。
黒子は育て上げたものを手で支えると、その上に体を沈めた。
「ああぁっ…!」
「…っく…」
一気に埋め込むと黄瀬が息を詰めた。
体にはいつも受けている愛撫はないけれど、どうしようもなく満たされる。
強い快楽で体は満足に動かない。体勢も不安定で、気を抜くと倒れそうになる。
「…っぁ…黄瀬…くん…」
もっと確かなものが欲しくて助けを求める。
黄瀬は自分と同じく情欲に濡れた目で、黒子を見上げた。
「…手、取って…」
言われるままなんとか戒めを解く。力尽きて黄瀬の胸の上に倒れた黒子の首を、自由を取り戻した手が引き寄せる。
「っん…んん…!」
キスしたまま、黄瀬が体を起こす。すぐに体勢が逆転した。
「…責任は取ってくれるんスよね?」
もちろん。意思を込めて黒子は黄瀬の首に手を回した。
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