黄瀬×テツナ(大学時代)

□ブラックコーヒー
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「一応聞くけどコーヒー飲む?」
「飲みません」
「だよね」
先ほどまで傍らのソファーにいたはずの黄瀬の声がキッチンからする。
黒子はソファーに背を預けて床に座った体勢で、手元の本に目を向けたまま答えた。
暫くして、黄瀬が湯気のたつカップを持って戻って来る。
コーヒーの香りだけは黒子も好きだった。
黄瀬がテーブルの上に置いたカップに手を伸ばす。
「飲まないんじゃなかったの?」
クスクスと笑い声がする。
黒子は構わずカップに口を付けた。
黄瀬はコーヒーに何も入れない。強い苦味が舌に刺さった。
「………苦いです」
小さく舌を出して嫌な顔をする黒子に黄瀬が笑う。
「黒子っちにはまだ早いっスねー」
笑われた不満に膨らむ頬を撫で、黄瀬はソファーに戻る。
「………」
本を片手にコーヒーを飲む一連の動作を、黒子は静かに見守った。
黄瀬がカップをテーブルの上に戻すのを見届けて、ソファーに座る。黄瀬の胸元に手を当てる。
「くろ…」
薄く開いた口に、自らの唇を重ねる。
黄瀬からは、飲んだばかりのコーヒーの香りがした。
それでも、彼とのキスはこんなにも、甘い。


fin 2013/01/02

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