黄瀬×テツナ(高校時代)

□永遠の誓い
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「…落としましたよ」
「ありがと」
黒子は黄瀬の指に引っ掛かって地面に落ちた鍵を拾った。
見覚えのない鍵だ。黄瀬に手渡しながら何とはなしに尋ねる。
「どこの鍵ですか?」
「俺の部屋」
チャリ、と黄瀬の手の中で鍵が鳴る。
「一人暮らしなんですか?」
「そうっスよ」
初耳だ。そういえば高校に入ってからの黄瀬の生活を良く知らない。
「行ってみたいです」
「いいっスよ。じゃあ今週末、泊まりにおいで」
あっさり頷いて、黄瀬は微笑んだ。


永遠の誓い


最寄りの駅まで迎えに来てくれた黄瀬と部屋に向かう。
駅から徒歩5分。見上げたマンションには覚悟していた程の高さはなかった。
「どうしたの?」
「…超高層マンションじゃないんだなって」
「がっかりした?」
笑いながら黄瀬がエントランスのロックを外す。
「事務所で借りてる寮みたいなもんっス。そんなにいいもんじゃないっスよ」
「いえ、十分です」
このセレブが。
罵りの言葉は一応心の中に留めた。
「どうぞ」
通された部屋は常識的な広さの1DKだった。
物はあるけれども彼らしく部屋は綺麗に整えられている。
「黄瀬くんはマメですよね」
「時々お見せ出来ない程大変なことになるけどね」
「人気者は大変ですね」
「大変ですよー」
話しながら時計を確認した黄瀬が腕捲りをする。
「そろそろお昼っスね。黒子っち、なに食べたい?」
「手作りですか?」
「僭越ながら」
黄瀬の手料理はバスケ部の合宿以来だった。
その技術力の高さを知っているから、期待が溢れる。
「なんでもいいです。黄瀬くんの料理好きです」
「光栄っス。じゃあ好きにして待ってて」
「ではまずあそこの私の名前が書かれた大量のアルバムを処分します」
「あ、ごめんなさい。やめて」


黄瀬の手料理が出揃ったのは待ち始めてから30分ほどのことだった。
「早いですね」
「パスタだからね。早いっスよ」
それでもこの短時間でスープとサラダまで用意しているのはさすがだった。
「いただきます」
「はい、どうぞ」
手を合わせてからフォークを握る。綺麗に盛られたパスタをフォークに絡める。一口食べると思わず笑みが浮かんだ。
「…美味しい」
「良かった」
うきうきとフォークを回す黒子よりも嬉しそうに黄瀬が笑う。
「さすがは帝光中料理クラブです」
「俺がバスケ部の合宿だと思ってたものは料理クラブの合宿だったんスね」
料理クラブは冗談だったが、ほんの少しだけ、バスケをやらせるには勿体ないとか考えてしまう。
これほどの腕があれば、一人で暮らしていくのに何の支障もないだろう。
「一家に一人黄瀬くんがいてくれたら、すごい助かりますね」
「それはプロポーズ?」
「むしろ家電的な?」
「酷いっス!」
無機物扱いに不満を漏らすも、黄瀬はすぐまた笑顔に戻る。
「黒子っちが望むならいつでも作ってあげるよ」
そっちの方がプロポーズじゃないか、と黒子は思った。
「いつか一緒に暮らせたら、いいね」
悩殺と呼ぶに相応しい黄瀬の笑みには、黒子のフォークを止めるくらいの力があった。
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