■おかしなノリの話

□終わりなき戦い
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「はっ…も…駄目です…っ黄瀬くん…!」
「まだまだ終わらないっスよ」


終わりなき戦い


「はい、あと1本ー」
声をかけたのはどのキセキだったのか、黒子には判別する力すら残されていなかった。
「黒子っち、あとちょっとっス頑張って!」
「…も…無理…です…」
「テツ!」
荒い呼吸を繰り返す黒子に、容赦なく青峰がボールを放る。
なんとか受け取った黒子は、残り僅かの体力を振り絞り、飛ぶ。
黒子の手から放たれたボールは歪な軌跡を辿り、リングに触れることなく床へ落ちていった。
―――ああ、可愛いなぁ…。
フォームは悪くないが、圧倒的に力が足りないのだ。
子供が背伸びをするような、不安定で心許ないバスケに、回りを囲むキセキ達の心がほっこりする。
「はい、あと10本ー」
「っ増えてる…じゃないですか…!」
「黒子っち!」
文句は言うが、黒子は律儀に黄瀬のパスを受けとる。投げる。落ちる。
「っは…黄瀬くん…お願いします…もう…っ…」
「ああ良いっス!堪らないっス!今の台詞でもう1本!」
他のキセキとは違う楽しみを見出だしている黄瀬からのパスは止まらない。
黒子は終わりの見えない苦痛に、意識が遠くなりかける。
救いは、不意に訪れた。
「ちょっと、なにやっているのよ!」
「桃井さん…助けて…」
桃井はキセキの包囲網から黒子を救い出すと、その胸に優しく抱き込んだ。
「ごめんね、テツナちゃん。私が目を離したばっかりに…」
「桃井さーん」
バスケ部唯一の良心である桃井に抱きつき、解放の喜びに泣きそうになる。
そんな黒子の横で。
「…次さつきが不在なのはいつだったかな?」

まだ、黒子の戦いははじまったばかりだった。


fin? 2012/10/15

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