■青峰×テツナ

□目隠し 2
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暗い部屋に泣き声のような嬌声が響く。
「ぁ…んっ、ん…ぅ」
黒子を組み敷いて口付けたまま、体内の熱を感じる。
口を塞ぐのがすっかり癖になってしまった。
名前を呼べと言ったのは自分なのに。酷い矛盾に自嘲の笑みが湧く。
その口から別の男の名前を聞くのが怖かった。
自分では駄目だなんて、はじめから分かっていたのに。それでも、黒子が少しでも救われるのなら、良いと思っていたはずなのに。
真相を知ってしまった今、表面上だけでも繋いだ熱が離れていってしまうことが怖かった。呼べば届く想いなのだと、知ってしまったのだ。明日にでも黒子は黄瀬の想いに気付くかもしれない。
終わりに怯えながら触れ合うのもそろそろ限界だった。
もうとっくに知っている。その目を覆う必要は、ないのだ。
「もうやめようぜ」
火照った体を寄り添わせ、胸にすがる黒子に告げる。
ゆっくりと顔を上げた彼女の瞳は、濡れていた。いつだって自分は彼女を泣かすことしか出来ない。
誰よりも、笑顔を望んでいるのに。


一方的に黒子との関係を精算して、もう一週間になる。何度か黒子が話しかけようとするのには気付いていたが、青峰が応じることは決してなかった。
目隠しは外してやった。彼女もすぐに気付くだろう。幸せな未来は、すぐ傍にある。
―――ほら。
青峰の視線の先には、体育館の隅に並んで立つ黄瀬と黒子の姿があった。
まともに黄瀬と話すこともできなかった黒子が、今は何の違和感もなく言葉を交わしていた。節々に笑みすら浮かべて。
「…良かったな」
自分で呟いた言葉が、深く胸を抉る。
笑って本人に告げるには、もう少し時間がかかりそうだ。
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