最強キラーシリーズ

□最強キラー 2.9(番外)
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「………」
「………」
面識はあるけれど話したことはない、という相手とはどう接するのが正解だろうか。
日向が最初の一言に迷っていると、相手は小首を傾げて口火を切った。
「…黄瀬です」
「知ってるわ!」
日向は部活中並に声を張り上げた。
「なんで名乗った!?初対面気取りかコラ!」
「いやいや、流石に分かってるっスよ。黒子っちのチームメイトの人っスよね」
「その程度の認識かよ!マジで黒子しか見えてねーのかよ!」
「…まぁ、割と」
「うぜー!」
日向の心からの叫びを浴びても、黄瀬は全く動じなかった。
「黒子っちは部活中っスか?」
「………」
日向が無言で見つめると、黄瀬は「?」を浮かべつつ笑顔を返す。
なにこいつ、と思わないわけではないが、キセキの世代の中ではまだ親しみやすい部類な気がする。
「…黒子は部活中だが、お前は暇なのか」
「黒子っちに会うこと以上に大事な用事など存在しないっス」
「暇なんだな」
被せ気味に遮って、日向は顎をしゃくった。
「ちょっと付き合え」


「日向くん、水を飲みに行っただけにしてはずいぶん遅かった…」
体育館に戻るとすぐに相田が声をかけてきて、止まる。相田の目を釘付けにしているのはもちろん日向ではなく、その隣だった。
「黒子っちー!」
当の本人は視線なんか気にすることなく、相田の横にいた黒子にぎゅーぎゅー抱きついている。
「…なんで、日向くんが黄瀬くんと一緒に来るの?」
「暇そうだったから拾った。練習参加させたらいいんじゃね?」
「日向くん…!」
やっと相田がこちらを向く。その目は、キラッキラに輝いていた。
「グッジョブ!」
ぎゅっと、まるでさっき黄瀬が黒子にしていたみたいに相田に抱きつかれる。それは一瞬のことだったけれど、日向の心臓を爆発させるには充分だった。
やばい。顔赤くなってないか。日向が己の額に手を当てると、黄瀬が探るようにこちらを見ていることに気がつく。
数回瞬いて、何やら深く納得した顔で、奴は腹立つほど綺麗に笑った。
「ちっぱいは正義っスよね」
「な…!」
グッと親指を立てた黄瀬が黒子に蹴り倒されるのは自業自得でしかなかった。でも、呆気にとられた日向まで相田にはたかれるのは、あまりにも理不尽だと、思う。


後日。またばったり鉢合わせた日向を、黄瀬はこう呼んだ。
「あー…ちっぱいセンパイ」
「黒子以外にも興味持てえええ!」

fin 2022/8/9



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