最強キラーシリーズ

□最強キラー 5
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「火神くんに問題です」
やたら楽しそうに黒子は言った。
「好きの反対はなんでしょう?」


最強キラー 5


体力ゲージが赤くなっていますよ、火神くん。まるで本当に見えるかのように黒子が言う。
赤くしてんのはお前の彼氏だよ。言い返す気力は火神にはなかった。
「好きだと認めないくせに嫌いだとも言えないなんて、火神くんは難儀な性格ですね。…ああ、難儀って意味分かりますか?」
「うるせーよ!論点すりかえんな!」
「無理して難しい言葉を使わなくてもいいんですよ」
「優しくすんな!」
体力ゲージが尽きそうだった。
コンティニューはできるのだろうか、とか弱気なことを考える。
「そんな火神くんに黄瀬くん撃退のヒントをあげます」
弱りきった火神にとって、黒子の提案は神のお告げに等しかった。
微笑む黒子の背には、確かに後光が射していた。
「火神くんに問題です」


「火神っち」
「………」
「火神っち?」
「………」
「火神っち…」
「………」
好きの反対は『無関心』らしい。
黒子が火神に授けた作戦とは、徹底的な無視だった。
そんな小学生のような攻撃が通用するとは思えなかったのだが、確かに黄瀬が自分を呼ぶ声はどんどん小さくなり、とうとう何も聞こえなくなった。
諦めてどこかへ行ったのかと、先ほどまで黄瀬がいた方を見る。ビクリと体が跳ねた。
黄瀬はその場にしゃがみ込んで両手で顔を覆っていた。
「…っちょ、お前、何してんだ…!」
思わず声をかけてしまうと、黄瀬が顔を上げた。
「なんで無視するんスかぁ!」
泣きそうな目で、声で、黄瀬は火神の腕にすがる。
「もう、俺に飽きた?」
「え…」
「散々弄んでおきながら、もう要らなくなった?」
「いや…あの…」
「俺をこんな体にしておいて!」
「どんな体だよ!」
結局いつも通りに盛大な突っ込みを入れてしまい、ハッとする。
慌てて辺りを見回すが、幸い人影はない。
仮にもモデルのくせに、公共の場でなんてことを口走るのか。というか、どうして自分が気を遣ってあげないといけないのか。
面倒くさい、と思いつつも、僅かに口元が弛んでしまう。
このむず痒い気持ちをなんて呼ぶのか。黒子なら言葉にすることができるのだろうか。


「面映ゆい、ですね」
頭上から黒子の声が降る。
コンティニューしました?火神くん。残機まで見えるみたいに黒子が言う。
「…無視はできましたか?」
「………無理」
だって黄瀬は必死だった。あの手を振りほどくなんて、できるはずがない。
「でもその余裕の無い様がちょっと嬉しかったり」
「おおおお前、なに言ってんだ!」
動揺する火神に、黒子は後光スマイルを見せた。
「好きに、なりました?」
「………」
もしかして黒子の作戦は、黄瀬の撃退を期待したものではなかったのではないかと気付く。
「…お前、どっちの味方なんだよ」
ぐったりしながら問えば、黒子はさも当たり前みたいに答えた。
「私は愛しい黄瀬くんと、大好きな火神くんの味方です」


fin 2012/11/24

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