最強キラーシリーズ

□最強キラー 4
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「逆に尊敬します」
黒子はやけに複雑な賛辞を口にした。


最強キラー 4


「あの黄瀬くんの追求に対してここまで逃げ切ったのは、多分火神くんが初めてです」
「あー…そう」
「キセキの皆なんて全員漏れなく黄瀬くんにメロメロでした。もはや黄瀬好きの世代でした」
「一文字増えるだけでえらいことになってんぞ!」
「ここまできたら、私も火神くんの勝利を応援したくなってきました」
「勝敗の基準が分かんねぇよ」
「簡単ですよ」
黒子は真剣に火神を見つめた。
「黄瀬くんの目を見て、『お前なんか嫌いだ』と言えれば火神くんの勝利です」
「そんなの…」
簡単だ。という言葉を塞ぐ感情な何なのだろうか。
火神は一度閉ざした口で別のことを言った。
「…つーか、今黄瀬いねーし」
「既に呼び出しています」
「仕事早ぇな!」


「黒子っちー!」
本当に来た。
連絡ありがとう、と黒子にまとわりつく姿はどこからどう見てもメロメロで、黄瀬好きの世代の頂点は黒子なんじゃないかと考える。
黒子は両手で黄瀬を宥めながら、目で火神に語りかけた。さあ、と。
「…黄瀬」
「うん?」
黄瀬が火神と向き合う。
火神はその金の瞳をしっかりと捉えた。ついさっきまで黒子を映していた瞳は幸せそうに煌めいている。
吸い込まれそうだった。
体は動かない。言うつもりだった言葉は喉まで上がらない。
目を開けたまま意識を失うような感覚に陥ったとき、黒子の声がした。
「火神くん!」
同時に膝裏に強い衝撃を受ける。体勢を立て直すどころか腕を引かれて、火神は地面に倒れた。
「ちょっ…黒子、お前…っ!」
「顔を上げないでください」
非難しようと上げかけた顔を思い切り押さえつけられる。グキっという音に嫌な汗が出た。
「な…何…」
「危険です。メロメロビームが出ています。あの目に見つめられたら、赤司くんでさえ10秒で落ちます」
「え…」
「絶対に目を合わせないでくださ…ああっ」
ガクっと黒子の体から力が抜けた。
「黒子…!?」
「…火神くん…」
とっさに抱き留めた体は力ない。
「私はもう駄目です…」
小さく震える手が火神の頬に触れた。
「…火神くんが日本一になるところ…見たかった…」
ぱたり、と手が地面に落ちる。
「黒子?…黒子!」
もう反応を返すことのない小さな体を抱き締める。
ひとしきり嘆いてから、火神は諸悪の根元に向き合った。もちろん、決して目は合わせないように気を付けながら。
黒子がいなくなった今、戦えるのは自分しかいない。
火神は持ち得る唯一の武器を振り上げた。
「俺は、お前が―――」


「―――で、目が覚めた」
「はぁ」
病んでますね、と言いながら黒子は手元の本を閉じた。
「それで、お前が、の続きは『好き』ですか?『嫌い』ですか?」
「そんなん『嫌い』に決まってんだろ」
「そうですか」
火神が憮然と言い返すと、黒子は本を持っていない方の手を上げた。
「では、本人にもそう言えますよね」
黒子の手は携帯を握っている。その画面には、黄瀬涼太と表示された発信履歴があった。


fin 2012/11/22

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