黄瀬×テツナ(高校時代)

□人としての尊厳
1ページ/1ページ

「あ…」
2号の散歩中に、黒子は黄瀬とばったり会った。
「黄瀬くんも散歩中ですか?…犬的な意味で」
「そうっスよー。自分は一人でもお散歩できるお利口ワンコっス。でも良かったらご一緒させてください」
「どうぞ」


人としての尊厳


黄瀬と並んで歩きはじめると、すぐに2号が黄瀬の足元にまとわりついた。
ちぎれんばかりに尻尾を振って愛嬌を振り撒く2号に黄瀬の頬が緩む。
「可愛いっスねー」
黄瀬が2号を抱き上げる。
「2号は黄瀬くんが好きみたいですね」
「ホントに?俺も好きー!」
きゅー、と顔を近付け合う一人と一匹を、黒子は微笑ましく見つめていた。
2号は大喜びで黄瀬の顔を舐める。くすぐったいのか黄瀬が笑い声をあげる。
ムッとした自分に、黒子は衝撃を受けた。
「…黒子っち?」
「なんですか」
「なんでそんな難しい顔をしているんスか?」
2号を撫でながら、黄瀬が首を傾げる。
「…人としての尊厳について考えていました」
「なんスかそれー」
黄瀬が笑う。2号は必死なほどに黄瀬にじゃれつく。
あれは犬二匹がじゃれているだけだと、黒子は己に言い聞かせた。
2号が黄瀬の口元を舐める。黒子は奪い取るように2号を抱き上げた。
空になった両手をそのままに、黄瀬が目を丸くする。
「黒子っち?」
隙をついて、黒子は黄瀬の唇を舐めた。
「え…」
固まる黄瀬の顔は見ないで黒子は踵を返す。腕の中で2号がキャンキャンと吠える。
その場を遠ざかりながら、黒子は赤くなっているてあろう頬に手を当てた。


―――2号に嫉妬するなんて、自分はもう駄目かもしれない。


fin 2012/11/29

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ