*短編*

□俺たちの太陽
1ページ/2ページ


「あ!におーーせんぱぁーーーい!!」

「んぁ?」

ドドドドッ!!ドンッ!!

「うぇっ!!」

「………。」

朝、仁王と丸井がいつも通り登校しているところを、後輩である切原が確認し、先輩大好き(特に仁王)な彼は、朝っぱらから大きな声で仁王の名前を呼びながら仁王に突進した。
これ、日常。

そして今、三人は無事(?)に登校し、朝練の為部室で着替えている。

「…いって……」

「ドンマイ仁王」

「すんません仁王先輩…思わず…」

目に涙を溜めながら頭を下げる後輩を見ると怒るに怒れない(寧ろ呆れてる)仁王は、優しく切原に声をかけて部活に向かう。

「別によか、ただ毎日は勘弁な」

「はいッス!!」

「たく、お前甘すぎ…」

これも日常。

そして切原は、学校生活でも仁王のそばにいる事が多い。
毎時間の5分休みには、階が違うにも関わらず、何かと理由を付けて、必ずと言っていいほど仁王に会いにくる。

「仁王先輩っ!!」

「赤也、なん?」

「お前また来たのかよぃ(呆)」

「別にいいじゃないっすか、てかそれより!単三電池もってません?電子辞書の電池が切れちゃって…」

「電子辞書って、お前使ってんのかよぃ」

「使ってますよ!失礼な!」

「くくっ、あるぜよ。」

「まじっスか!?やった!!」

(…なんであんの?)


昼休み。
昼休みは、レギュラー全員で食べる事が多く、天気の良い日は、屋上か中庭、雨などで天気がすぐれない日は学食、とだいたい決まっている。

「あ、仁王先輩卵焼きだ!珍しいっスね?」

「おん、姉貴が作れって言うけ、仕方なく。」

「え!?自分で作ってんすか?」

「そうじゃよ?」

「仁王は意外と家庭的だからね。」

「意外とはなんじゃ、意外とは…まったく、失礼な奴じゃ。」

「ふふ…まぁいいじゃないか。」

「ヘェ〜…」

と、仁王自家製の卵焼きを見つめる切原に対し仁王は

「食う?」

「え、いいんスか!?」

「別に構わんよ、ほれ、あーん」

「っ、ぁ…あーん」

一同苦笑。

そして部活。

「仁王先輩!仁王先輩っ!!」

「ん?」

「試合しましょ!」

「またお前さんとか、仕方なかね」

はたまた。

「仁王先輩!俺次試合なんで、見ててくださいね?絶対勝ちますから!!」

「はいはい」

「絶対っスよ!?」

「おー、分かっとぉ分かっとぉ。」

とまぁ、こんな感じ。


「おい仁王、てめー愛されてんな。」

「なん?ぶんちゃん、ヤキモチ?」

と、ニヤニヤ笑う仁王。

「ばーか、うるせぇよ。」

「なんよ、図星かい」

「黙れ。で?どうすんの?」

「…さての、告白されてから決めるかの。」

「自意識過剰。」

「ちゃうわ、宣言されたん」

「え?」

「おん、あんな…」


ある日の放課後。

「仁王先輩!」

「赤也?なん、帰ってなかったん?」

コート整備を終えた仁王がレギュラー部室へ帰ってくると、切原が制服に着替え仁王を待っていた。(本来ならレギュラーはコート整備などはしなくても良いのだが、入ってきたばかりの一年に整備の仕方などを教える為に、毎週代わる代わるでコート整備監督を行っていて、今回は仁王がその担当だった。)

「先輩、どうしたら俺の事見てくれますか?」

「…赤也?」

「どうしたら俺の事、一人の男として見てくれますか?」

「なに言って…」

「どうしたら、幸村部長や、丸井先輩と同等に見てくれますか!!」

「………。」

仁王は突然の事に唖然としていたが、何と無くこんな時がくる予感がしていたのでさして驚く事も無く

「そうじゃね…お前さんが、幸村とぶん太に勝てる位、強くなったら考えちゃる。」

「ぇ?マジ…スか?」

「勝てたらな。」

「…っ、俺っ!絶対勝つッス!!勝って、勝って仁王先輩に改めて告白するっス!!」

「ばか、勝ったところで、俺がOKするとは言っとらんよ?」

「あ!っいや、それでも!!ダメで元々でも告白するっス!!だって俺、仁王先輩大好きっスから!!」

「もう告白しとるじゃろ、阿呆」


と、苦笑しながらも柔らかく微笑んだ。


「まじ?」

「おん。」

「その時がきたら、どうする気だよ」

「…そうじゃね。」

仁王は少し考えるそぶりを見せ。

「まだ分からんけど、とりあえず…赤也は俺には眩しすぎる。」

「……駄目じゃん。」

「俺には合わんのよ…あいつは太陽じゃけ。」


赤也は俺たちの光、太陽だから。
俺たちは月として、あいつの成長を見守って行くんだ。


.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ