*短編*

□モヤモヤする2人
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「「ジャンケン…」」

一月、大会もなく、天候的にも落ち着きがないこの季節、どこの部活も大体が若干気を緩め、あまりハードな練習は行われていなかった。
そして、王者と呼ばれる立海のテニス部もまた、この時期は皆和気藹々と部活に勤しんでいた。

「負けた…」
「ふむ。」

「よっしゃ勝った!」
「すまねぇ、頼んだ。」
「ふふ、なら2人に買い出しは任せたよ。」

「仕方あるまい、行くぞ仁王。」
「ぁ、おん…」

買い出し要員として派遣されることになったのは、柳と仁王。
そして、これがなんの買い出しかといいと、それは部長幸村のこの一言から始まった。

「あ、テーピング切れた。」

「え、テーピングかよぃ…」

「テーピングも、ってことは、他にもなんか切れたものあるの?」

「あ、うん。さっき転んで消毒液使おうとしたら無くて…」

「そういや、さっき一年が言ってたんスけど、洗濯用の洗剤も切れたって」

「ボールもそろそろ替え時だな、だいぶ古くなってきてる。」

「練習用のネット、また穴あいたらしいぜ?」

「昨日備品整理したところ、足りないものがありまして。」

「う〜ん、そうだね…何かあってからでは手遅れだし、買い足しに行こうか。」

と、ここで冒頭に戻る。

「それじゃ、2人ともよろしく、なんかあったら連絡して」

「あぁ、恐らく問題ないだろ。」
「なんか他に足りんもんあったら連絡して」

「うん分かった。いってらっしゃい。」

ガチャン…

……………。
部室には微妙な空気が流れる。

「なんだ!?なんだこれ!?無ず痒い!!」

「あぁあーーー分かるっす!あの2人の距離感っすよね!?」

「そうっ!絶対あいつら相思相愛だから!両思いだから!とくに仁王!柳好き好きオーラだしまくり!誰だあいつを詐欺師って呼んだ奴!?」

「まぁ、仁王はアレでいてかなり内気だから…」

「柳君も、勝ち目のない勝負には挑まないタイプですからね…そして、」

「「「鈍い!!!」」」

「(苦笑)」

「なんでなんすかね、普段すごいいろんな事に鋭いのに!」

「仁王の事となると鈍い!!」

「仁王の体調管理については超一流なのにね…」

「そうっすよ!柳先輩って、基本レギュラーに関わらず部員全員の体調を見てるっスけど、仁王先輩のことはとくに気にしてる!しかも、俺や他の部案には肩を叩いて話すんのに、仁王先輩にだけ頭に手を置くんですよ!?」

「しかも表情が柔らかいですよね。」

「前、数学よ授業中、珍しく仁王が起きてんなぁって思ったら外見てて、何見てんだろって外見て見たらF組が体育してたから」

「確実に蓮二をみてるね。」

「そういえば、つい先日の事なんだが…」

「え?真田もあるの?」

「ぁ、あぁ…部室に、俺と蓮二と仁王の三人しかいなかった事があったんだが、その時に、データ整理をしていた蓮二が消しゴムを落としてな、それを蓮二が拾おうとした時に、同じく拾おうとしていた仁王の手とがぶつかり合ったみたいで…なんとも言えぬ空気が…」

「真田でも分かるって相当じゃない?」

「む、それはどうゆう意味だ幸村!」

「あ、俺も一つ思い当たる節が…」

「なになに?ジャッカルもあるわけ?」

「あぁ、夏真っ盛りの部活の時、丁度休憩の時間で、仁王がベンチにあった自分の給水ボトルを手に取って飲んだんだ。でもそのボトル、実は柳ので、柳が仁王に自分のだって伝えたら、仁王すげー顔真っ赤にして焦り始めてよ…」

「あぁ…あん時ね、そのあと仁王が熱中症で倒れた時のやつ。」

「え!?あの時、倒れる前にそんなドラマがあったんすか!?」

「ふふ、仁王可愛いね。」

「まるで恋する乙女ですね。」

…………。

「「「はぁ……」」」

幸村、真田、柳生、丸井、ジャッカル、赤也のため息が一気に重なり。

「なんで蓮二、あんなに仁王がわかりやすい反応してるのに気付かないんだろ…」

「もう狙ってるとしか思えねぇぜぃ…」

「でも柳君、仁王君は逆に自分の事が嫌いなんだろう、なんて言ってましたよ。」

「えっ!?ちょっ、言っちゃまずいけど、柳先輩馬鹿なの!?」

「うむ。これでは仁王があまりにも…」

「くっつきそうでくっつかねぇんだよな、あの2人…」

「なんていうかあの2人…」


「「「モヤモヤする。」」」


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