*短編*
□ゴングはいま鳴り響いた
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U-17 ここは、敗者の集う崖の上
仁王は毎晩自主練のために使っている滝つぼに訪れたのだが、今晩は先客がいた。
「…越前?」
青学一年、越前リョーマであった。
彼は、関東大会前日に、立海のエース、二年の切原を倒し、関東決勝では副部長である、皇帝真田を倒し立海の関東優勝をまんまと破り、更には、全国決勝で、部長の神の子幸村を倒して、立海全国三連覇を打ち崩した、いわば立海にとって宿敵とも言える存在であった。
だが、仁王はそんな彼に少なからず興味を抱いていた。
「仁王さん?」
「なん?こんな夜中まで自主練なんかしとるん?努力家じゃねぇ」
仁王は、表には出さないが中々自尊心が高い。
そのため、あまり目立って自主練などをしたりはしない性格であった。
「あんたもじゃないの?」
「まさか、そんなわけ「嘘。」…。」
越前が仁王の目をまっすぐに見据える。
「知ってるよ。ここ、あんたがいつも自主練に使ってるとこでしょ?」
何故知っているのか。
仁王には検討も付かなかった。
「なん?お前さんストーカー?」
仁王は内心の動揺を隠しながら軽口を叩く。
「半分正解、半分ハズレ。」
「?」
「自主練できる場所探してる時に偶然あんたを見つけた。ここで自主練してるあんたを。」
なるほどね、と心の中で納得し。
「毎晩、ここで自主練してたよね?ちょっと意外だった。」
「失礼なやつじゃの」
「最初はどうでも良かったんだけどさ、最近は自主練してるあんたみると心がざわつく。」
「? なん、それ?」
仁王には意味がわからなかった。
「あんたを好きになった。」
はっ? スキ?…って、好き?
「…ぉ、お前さんってホm「違う。」…じゃぁ、なして?」
「さぁ?」
さぁ?って…
「あんなぁ「あんただから」え?」
「俺は男が好きとかそんなのないけど、あんたが好き。」
仁王の瞳をまっすぐ見つめ。
「男でも女でもいい、関係ない。俺は仁王さんが好き。仁王さんだから好きになった。」
「っ…」
なんで?なに動揺しとるん俺?こんなガキに…なにときめいとるんよ、乙女か?!
「必ず落としてみせるから、覚悟しといて」
勝ち誇ったように笑い、自分の横を通りすぎる越前の腕を掴み。
「俺を落とせるん?餓鬼」
負けっぱなしはプライドが許さない。
仁王は越前の唇に自らの唇を押し付け挑戦的な笑みを浮かべた。
((絶対落としてやる))((あー…、絶対負ける))