*長編*
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「着いたで雅。」
長い道のりを掛けて雅がたどり着いたのは、西は大阪、四天宝寺の山だった。
「ありがとありんす。」
雅は籠からおり一息つく。
「雅さん、送ってきましょか?」
「平気でありんす、お二人は、ここで?」
「はい、何時迄も待っとりますんで、ゆっくりしてきて下さい。」
「すまんね、ありがと。」
雅は小さく微笑み小道を進んで行った。
真っ直ぐ道なりに進んで行くと山の端しに辿り着いた。
そこには一つ、小さな墓石が立てられていた。
雅はその墓石の前まで行き、抱えたいたカンギクの花束を置いた。
墓石の横には椿が咲いていた。
「久しぶりじゃね、千歳…」
その墓石の主は、雅がかつて愛した男、千歳千里の墓であった。
「お前さんと別れて、もう七年になるんね、時の流れは早いの。」
雅は空を見上げ微笑み
「あの子ももう…八つになったよ…」
雅の頬に一筋涙が落ち
「誕生日、おめでとう….ちぃ。」
椿の花が、ひとつ落ちた
「話したいこと、たくさんあってんけど…謙也と光が、この寒い中うちを待っててくれてるけん、もう行くわ。」
雅は立ち上がり踵を返した
「また、来年…」
雅はその場から立ち去った。
「あ、きた。なんや雅、早かったやないか。」
「今日は寒いでありんすから、天気が荒れる前に」
「話せました?」
光は真っ直ぐ雅の瞳を見て何う。
「…ふっ、おん、相変わらずじゃわ。」
「そっすか。」
「ま、そんなもんやな。」
三人は笑い合い、その場を後にした。
(ちぃ、うちは元気にやっとります。心配いらんよ?)
"なによりたい。それより、もう八つになるんばいね、早かねー。"
"愛しとぅとよ雅、ずっと…"
(生まれてきてくれてあんがと、うちのこと、好いてくれてあんがと…ずっと愛しとぉ。)
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