*長編*
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愛した人(千歳×仁王)
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「オルゴール…ね。」
雅は綺麗に装飾された、西洋のオルゴールを懐かしそうに見つめた。
「こんなん贈り物として持ってくるなんて…阿保な奴や、ほんまに…」
小さな座敷の中、オルゴールの音色だけが響き渡り、雅は夜空を見上げる
"雅…"
「っ、誰…?」
"雅、元気そうたいね"
「…ち、ちとせ……?」
夕闇の中で、千歳の姿が映し出され
"おー、覚えててくれたとね!!
雅、会いたかったばい。"
「千歳…っ、会いたかった…」
雅の頬に一筋の涙が落ち
"すまんばいね雅、…ずっとそばにおれんくて…"
「っ、謝らんで…謝らんといけんのは、うちの方じゃ…」
"雅は悪くなかと、今も昔も。…雅、ちょっと見ん間に、綺麗になったとね。"
「ちぃ…うち、まだ好き…まだ、愛しとぉ…」
"その言葉、ほんなこつ嬉しかばい…ばってん、雅には幸せになってほしか"
「無理….無理じゃよ、ちぃ…うちはもう…」
"雅、愛しとぉ…けど、俺はもう雅を幸せにすることは出来んたい、幸せになってほしいばい。"
「ちぃ、嫌…行かんで…」
"雅、愛しとぉとよ、ばってん、ずっと見守ってるたい、幸せになるんとよ…"
千歳の姿は闇へと消えていき
「ちぃ…ごめん、あんがと…」
雅は空を見上げ微笑んだ
(幸せになるんちゃよ、雅…)
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