*長編*
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叶わぬ相手(忍足+仁王)
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幸村が去り、雅は自分の座敷の窓枠に腰を下ろし、星空を眺めていた。
「雅、ちょっとええか?」
すると座敷の外から、店主忍足が声をかけてきた
「何でありんしょう?」
「今日はお疲れさん」
忍足は座敷の中へ入りながら雅へ労いの声を掛ける
「いえ、楽しかったでありんす。」
「ほうか、そんなら良かったわ。」
そう言って微笑を浮かべ
「明日は一日休みでええけ、ゆっくり休みや」
「ありがとありんす」
忍足は要件を伝え終えると踵を返し座敷を去ろうとするが
「あぁせや、雅」
忍足は立ち止まり雅の方へ近づく
「侑士?」
「誕生日、俺にも祝わせてや」
と言って雅の頬に口づけを落とし
「っ…侑士、なにしてっ!」
忍足は雅が話し終える前に小さな箱を差し出し
「これ…」
「オルゴールや」
「…あんがと」
嬉しそうにオルゴールを抱きしめ笑顔を見せる雅に対し
「雅、お前もそろそろ、自分だけの幸せを望んでしもうてもええんちゃう?」
「馬鹿なこといいなさんな」
「まぁ、ええわ、ほなゆっくり休みや」
忍足は座敷を後にし
「自分だけの幸せって…その言葉、そっくりそのままお前さんに返しちゃるよ、阿保…」
そう、切なく呟き雅はオルゴールを回した
(今日ぐらい、俺も男なっても、誰も責めんやろ?ほんま…愛しとるで、雅)
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