*長編*
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開店前(ジャッカルと文)
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「忍足ぃー!」
店先で声を張り上げ
「なんや、早かったやないか。久しゅう、文、ジャッカル。」
「おう、思ったよりことが手っ取り早く進んでよ、今日に間に合ったわけ」
と、赤髪で小柄な文と忍足と話していると
「おい文、手伝えよ…」
店の中へ大きな箱を持って入ってきた色黒のスキンヘッド、ジャッカル桑原が溜息をついた
「ジャッカル、すまんな毎度のことながら」
「いや、構わないぜ」
そういい、もくもくと荷物を運ぶジャッカル
「なん?賑やかや思いんしたら、お二人でありんしたか。」
「こんな朝早くから…ふぁ、ねむ…」
そこへ雅と、雅の後ろで眠そうにしている紅華がやってきた
「雅、紅、久しぶり!」
「文も元気そうで何よりでありんす」
「文さん!久しぶりっす!」
紅華は文を見ると嬉しそうに駆け寄り抱きついた
「文さん!久しぶりに文さんの舞見たいっす!」
「えー?もう覚えてねぇかも」
「えー」
「そういえば、文が身請けしていってから、鬼灯の間は淋しくなったでありんす。」
そう、この赤髪の文は、昔この遊郭にいた遊女の一人であった
「何言うとるんや、今は、蔵蘭と周が頑張っとるやろ」
そこへ店主である忍足が口を挟む
「蔵蘭と周が…」
「そうでありんすね。文が、鬼灯がいなくなった穴を必死に補ってるでありんしょうね、…うちにもう少し体力があったら」
「姐さま!俺だって頑張ってるっす!俺が鬼灯継ぐっす!!」
そこへ更に、紅華が頬を膨らませ、拗ねた顔をして訴える
「「「……っ、ぷっ…」」」
すると、そこにいた(ジャッカルを除く)全員が吹き出した
「無理無理、お前はまだまだだっての」
「くくっ…やば、久々につぼったわ」
「き、…気持ちはわかったでありんす」
雅は笑いを堪えて必死に紅華を宥める
「なっ!笑い事じゃないっすよー本気っすもん」
だがしかしなおも笑い続ける三人の態度に臍を曲げ、奥の部屋に走り去って行った
紅華がいなくなってから
「でも、紅華はそのうち、鬼灯になるでありんしょうね」
「だな、蔵蘭は沈丁花、周は桔梗、そして雅、あんたは菖蒲。紅華はいつ、鬼灯になるかな」
「それは菖蒲である雅が決めることや。ほい、終わり、いつもおおきになぁ」
「あぁ、こちらこそ。また新しいのが手に入ったらくるぜ」
「おおきに」
「行くぜ、文「あぁぁあぁ!!ジャッカル!あれ!あれだして!」ぁ、あれ?…あぁ、あれか」
ジャッカルは小走りで店をでで行き、小さな箱を持ってきた
「ありがと、雅!」
「なん?」
「誕生日!おめでとー」
そう言って箱の蓋を開けて雅に見せる
「これ、…なん?」
「西洋の菓子で、ケーキって言うんだ!私が今日作ってきたんだ、紅華と食べてよ」
「文…」
「上手くできとるやん、流石文やな」
そう文を褒めると文は恥ずかしそうに微笑み
「雅、幸せになって、雅は幸せになるべきなんだから。生まれてきてくれてありがとう、またくる」
「あんがと、うん。頑張ってみる」
雅と文は抱き合ってそう言葉を交わした
(雅に沢山の幸せがおこりますよーにっ!)
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