*長編*
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「それじゃ、俺様は行くぜ、まだ仕事が残ってやがる」
「大門まで見送るでありんす」
「いや、必要ねぇ。」
というと跡部は一呼吸おき
「別れが名残惜しくなる」
そう吐いて出て行った
雅が店の外まで追いかけ小さくなっていく背中を見つめていると
「相変わらず、キザな客やなぁ、跡部さんは」
「ふふ…、でも、それがいやにしっくりくるとこがまた、跡部さんの良さじゃね」
「せやな」
背中が見えなくなるまで見送ると
「さ、雅中入りや、風邪引いたら大変や」
「はい」
一つ返事で頷き、自分の座敷へと戻っていく
「あ、そうじゃ」
急に雅が立ち止まり振り返る
「なんや?」
「近々、亜久津さんがこられるみたいじゃ」
「ほうか、やけど、なんで分かるん?」
「白雪の着物が、櫻と一緒に届いたでありんす」
「櫻、なるほど。 せやったら、ちゃんと御迎えの準備せなあかんなぁ」
「そうじゃね、後で部屋行くわ」
「おん、分かったわ、ほなしっかり休んどき」
店主が奥の部屋に入っていくのを確認し、雅も座敷へと歩を進めた
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