*長編*

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カラン…
店の呼び鈴が鳴り響き、店主が奥から顔を出す。

「これは、久しぶりですわな」

店主の忍足が恭しく頭を下げ

「すぐに案内できますわ」

と言い、客を案内する。


「雅」

「はい、大丈夫でありんす、お通してくんなまし。」

その声とほぼ同時に客が座敷へ足を踏み入れており、雅は深く頭を下げていた。

「久しぶりだな、雅」

懐かしい声に驚き急いで顔を上げる

「ぇ…跡部、さん」

跡部と呼ばれた男は、雅が顔をあげた瞬間に抱き締め

「会いたかったぜ、雅」

と言って雅の額に口付けを落とした
雅はそれに応えるように、跡部の背に腕を回し体を寄せた

「ご無事でなにより…また会えて、良かった…」

「あぁ、すまねぇ」

「なんの連絡もこんから、心配しとったんよ?」

「あぁ、悪りぃ…」

「もう、落ち着いたん?」

「どうだかな、幸村からはなんか聞いたか?」

「なんも…幸村さん、一週間前に来たっきりじゃ。」

"そうか"と返す跡部に雅は"ただ…"と続ける

「柳生先生から、ちょっと聞いた…」

「柳生からか、なるほどな…」

跡部は少し間を開け

「まずは現状報告からだな。柳生から阿片のことは聞いたな?」

と、切り出し

「阿片の方は大分収束した、人斬りも、警備体制を厳重にしてあるから目立った動きは無い。だが、阿片も人斬りも、核となっている人物が未だ見つかっていない」

雅は不安そうに顔を歪める

「大丈夫だ雅、もう一つ収穫がある」

「もう一つ?」

「あぁ、恐らくだが、この町には、阿片の中心人物も、人斬りの中心人物も留まってはいない」

「え?」

「江戸、江戸にいるはずだ。」

「江戸…」

「あぁ、今俺の部下を江戸に向かわせて情報を集めてるところだ、だから…お前が心配する程の事じゃねぇから、安心してろ」

「はい、ありがとございます」

雅は安心したように綺麗に微笑み

「あと、幸村の方はまだ忙しそうだ。」

「ほうか…」

一瞬、沈黙がその場を包み

「しばらく、此処には来られねぇらしい、だか、相変わらずタフな野郎で、かなり元気だ。」

「そう、なら良かった♪」

雅は笑顔を浮かべてホッと息を吐いた
 跡部は、雅の笑顔を見ながら、
"この町の平和も、雅の笑顔も、全てを守ると心に誓った"



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