*長編*

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「雅」

雅の座敷に店主の忍足がくる

「柳生先生が見えたで」

「失礼致します。」

忍足の背後から中へ入ってきたのは、この町で最も腕と立つ医者、
名を、柳生比呂士

「先生、久しぶりでありんす。」

「ほな先生、よろしゅう頼んますわ」

と言い、忍足は座敷を出て行く

「さて、では早速診ましょうか」

と和やかに微笑み

「体調は如何ですか?」

「ん〜、普通? 悪くもなかし、かと言って良くもなか」

「良くもない、ですか」

苦笑を漏らし

「しっかり食べてますか?」

「おん、紅華が、食べんと怒るんよ…」

「ふふ…、そうですか、紅華さんが」

雅は、笑ことやないんよ?と反論しながらも楽しそうに話す

「紅華さんは、雅さん一筋ですからね、心配されてるんですよ」

「分かっとるよ」

「紅華さんだけじゃなく、忍足君だって、貴女をいつも心配してます」

「おん、知っとる…早く治さな駄目じゃね」

「はい、だからあまり無理はしないで下さい。」

「気を付けます」

と、微笑を浮かべ

「ふふ…、ではいつも通り薬を出しておきますね。」

そういい、立ち上がろうとしたが

「先生、聞きたいことあるんよ…」

と、深刻そうな顔をしながら柳生を引き留める

「…なにか、あったみたいですね。」

まぁ、なんとなく分かりますが、と付け加えながらも、なんですか?、と優しく問い掛ける

「町で起きてること…なんか、あったんじゃろ?」

「幸村君、ですか?」

「っ…! なんか、知っとるんね!?教えてっ…うち、心配でっ…!!」

必死に訴えかける雅に、柳生は至極落ち着いた口調で

「落ち着いて下さい、大丈夫ですから。」

安心させるように雅の小さな身体を優しく抱き寄せる

「先生…」

雅は柳生にしがみ付き、目に涙を浮かべる

「お話しますから、落ち着いて聞いて下さいね。」


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