*長編*
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「嘘つき…」
雅は、手に持っていた紙切れを見ながら呟いた
「やからお前さんは気に食わん…」
紙切れを備え付けの鏡台に置きながら、哀しそうに目を伏せた
「雅姐さま、朝ごはん、持ってきましたよ♪」
そこへ、いつも通りの笑顔で紅華がやって来た
「あんがと」
いつも通り返事を返すと
「…雅姐さま?」
心配そうに紅華が駆け寄ってくる
「なしたん?うちの顔に、なんかついとる?」
精一杯の笑顔を作りながら
「なんか悲しいこと、あったんすか?」
姐さま泣いてる、と紅華が泣きそうに言葉を紡ぐ
「そんなこと、なかよ」
「でも、」
その時、紅華は鏡台に置いてある紙切れを見つけ、手にとった
「幸村さん、また来れなくなるんすね…」
そこには、
"ごめんね雅、また当分来れないんだ。 昨日は嘘付いちゃったね、ほんとにごめん。 幸村"
と、記されていた
「忙しい人じゃけ、仕方なか」
といい、窓の外に目を向ける
「…最近、町でなんかあったみたいっす。幸村さんだけじゃなくて、他のお客さんもあんまり見掛けないみたいで…」
「そう…」
そうして雅は、なにか大きな事がこの町で起こらないようにと、心の中で祈りながら空を見上げた
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