*短編*
□Winter warm proposal
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「真田、すまん遅くなった」
「来たか仁王、いや待ってない」
「そ?よかった」
そう言って微笑むこの男が愛しいと思ってしまう俺は末期かもしれない、だがしかし、こいつといられるのならば、たとえ末期であっても構わない。
今日は12月4日、俺の中学からの密かな恋人、仁王の誕生日だ。
「最近体調を崩したと聞いたが、大丈夫か?無理してるようなら…」
「さーなだ、心配なかよ?へーき♪」
「そうか、なら」
「おん、久々のデートじゃき、楽しませてな?」
「無論だ」
女のように微笑み、仁王は俺の手に自分の手を重ねた。
「におっ「今日くらい、許して?」…仕方ない」
「あんがと♪」
俺はつくづくこの男に甘いらしい。
普段あまり甘えてくるような行動を示さないこいつが、いきなりこうゆう突拍子もないことをしてくると、正直心臓がもたない…情けない、精進が足りぬな。
「真田?何考えとるん?」
仁王が首を傾げて俺の顔を覗き込んでくる、…全く、こいつは動作一つ一つに色気があるからいけない。
しかも本人は無自覚らしい。
かなりの困り者だ。
俺にならともかく、他の奴にもこうだから心配が絶えない。
だがしかし、その心配も今日で少しは和らぐだろう。
「なんでもない、お前が可愛いなと思ってな。」
そう言ってやると仁王は顔を真っ赤にさせて俺に小さな声で暴言を吐いた。
「…阿保……」
ふっ、ほんとに可愛い奴だ。
「真田、今日はあんがと、楽しかったぜよ」
「あぁ、仁王。」
「ん?」
「明日からまた病院か?」
「…そ。でも、長くても二週間くらいじゃ」
「そうか、よかったな」
ちょうど一年前のこの日、仁王は倒れた。
その日もこうして2人で出かけていた時のことで、仁王が急に胸を抑えうずくまり、俺の腕のなかで意識を失ったことを、まるで昨日のことのように覚えている。
その日以来仁王は、柳生の家の病院にお世話になっていた。
「じゃけ、クリスマス…真田が大丈夫なら…」
最近は顔色も良く、病状も良好、このままの状況が続いてほしいが、油断は禁物だな。
「あぁ、もちろんだ。二人で過ごそう」
「っ…おん!」
俺はそんな仁王を、これからも支えていきたいと思っている。
だから…
「そうだ仁王、一つ渡し忘れたものがあった」
「なん?」
「目を、閉じてくれるか?」
「?」
俺の言った通りに目を閉じた仁王の左手をとり、薬指にあるものを嵌めた。
「っ…さなっ!ん…」
目を見開き言葉を紡ごうとした仁王の口を自分のもので塞ぎ、そのまま深くキスをした。
「っは….真田、これ…」
「受け取ってくれるか、雅治。」
「っ、ええの…?」
「当たり前だ」
「でもっ!」
「雅治、愛してる。結婚、してくれないか?」
「…断る理由、なかよ…馬鹿…」
「ふっ、これからもよろしくな、雅治。」
「さな….げんいちろ…好き、ずっと、そばにおってな….」
「無論だ。」
俺は仁王の体を引き寄せ強く抱きしめた。
これからは君がずっとそばにいるから、なにも怖くない。
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