鋼の蝶
□車上の出会い
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-―東方司令部・司令官室。
「乗っ取られたのはニューオプティン発特急〇四八四〇便。東部過激派『青の団』による犯行です」
「声明は?」
「気合入ったのが来てますよ。読みますか?」
「いや、いい」
チャ
その音とともに黒髪の青年、ロイ・マスタング大佐と金髪の女性、リザ・ホークアイ中尉が司令官室へと足を踏み入れる。それと同時に視線が二人に集中する。
「どうせ軍部の悪口に決まっている」
「ごもっとも」
「要求は現在収監中の彼らの指導者を開放する事」
「ありきたりだな。――で、本当に将軍閣下は乗っているのか?」
「今確認中ですが、おそらく」
そう呟いたのは驚異の記憶力を持つ男、ヴァトー・ファルマン少尉。
「困ったな。夕方からデートの約束があったのに」
「たまには俺たちと残業デートしましょうやー」
まずい茶で と言わんばかりに言ったのはわずかに小太りの男、ハイマンス・ブレタ少尉。
「ここはひとつ将軍閣下には尊い犠牲になっていただいてさっさと事件を片付ける方向で…」
むう…とロイは本気の目で呟く。
「バカ言わないでくださいよ大佐。乗客名簿あがりました」
このメガネの青年はケイン・フュリー曹長。
「あー本当に家族で乗ってますね。ハクロのおっさん」
将軍をおっさん呼ばわりしたこの男はジャン・ハボック少尉。
「まったく…東部の情勢が不安定なのは知ってるだろうに。こんな時にバカンスとは…」
ロイは乗客名簿を見つめ、口元を歪めた。
「ああ諸君。今日は思ったより早く帰れそうだ」
「鋼の錬金術師と紅雷の錬金術師が乗っている」