妖の蝶
□ぬくもり、そして仲間
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『亜沙那』
こいつなら、いい。
呼ばれても。
「ん?
其れがお前の名か?」
『そう。
亜沙那。其れが私の名前』
「亜沙那……か。
良い名じゃ」
そう言ってぬらりひょんは私の頭を撫でた。
乱暴に。
暖かい。ははうえの撫で方はもっと優しいけれど、こいつに撫でられるとははうえみたいに頭があったかくなる。
「亜沙那!
甘味処へ行こうか。何か食べさせてやろう」
『………うん』
最初はあんなに警戒してたのに。
可笑しいや。もう、こんなに馴染んでる。
嬉しかった。
甘味処に行こうと言ってくれて。
私をぬらりひょんら“甘味処 桜屋”に連れていってくれた。
あんみつを食べた。
かすてらと言う珍しい甘味もあった。
凄く甘くて……少し甘すぎたけど、美味しかった。
♢♢♢
ワシが拾った幼子……最初、警戒心が強くて名前さえ、教えてくれんかった。
だか、少し話せば名を教えてくれた。
“亜沙那”と言うらしい。
あんなに警戒心が強かった幼子は、頭を撫でてやれば痛いと言いながらも、幸せそうに笑う。
ワシはその顔が見たかったんじゃ。
始めて見たこいつは、不幸な目をしておったからに。
甘味処に連れて行ってやれば、甘すぎるといいながら、美味しそうにほうばる。
あんな不幸な目をしていたお前を笑わせたいと思った。
笑ったお前をワシの百鬼夜行に並ばせてやろう。
ワシは密かに、そう誓った。