NOVEL01

□熱い首
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すぐに誰かが戻ってくるだろうが、偶然が重なって亀の中には他の仲間は居ない。不自然な組み合わせだった。じきにトリッシュが手洗いから戻るだろう。ナランチャとフーゴも。
ブチャラティとミスタの会話がボソボソと聞こえる。トリッシュに何かないか警戒していて、亀の中に注意は向いていなかった。

アバッキオはただ無言で部屋の隅に立って、じっとしている。
香ってくるのは微かな汗と外気の臭いだった。

アバッキオのプラチナブロンドを巻き込んで肩にジョルノの目鼻が当たる。なだらかな額と彫りの深い目元。ぴたりと体が密着した。お互い素肌が触れる首筋が温かくて子供を抱いているようだ。
あばらの細い一本一本を感じられるのではないかと思う。骨に熱が張り付いたような感触。
その胸がバクンバクンと大きく跳ねる振動が伝わってくる。顔色一つ変えていないのに、その心臓は薄い胸から飛び出さんばかりにばくばくと打っているのだ。小動物の胸に手を当てたような薄皮の向こう。押したら潰れそうだ。僅かに息が荒いようでもあった。
アバッキオは呆れた。しかし喉もとから温かいものが流れ込んだようなずんとくる感覚。充実感だろうか?何の?ただ、悪い気はしないのだ。
ふ、とひとりでに頬が弛む。
ジョルノはむっとしたように咳払いをした。

「あー…その、なんだ…可愛いところもあるじゃねえか」
「…笑わないでください」

背中に触れるとびくりと肩が揺れ、アバッキオの肩に巻き毛頭が押しつけられた。懐くつもりそうでないのか。どっちかにしろよとアバッキオは思う。

「嫌か」
「…嫌です」
「じゃあ止めてやらねえ」

ジョルノは黙ってアバッキオの長い髪をくぐり、露出した首筋に、直に首を絡めた。そして小さく舌打ちをしてみせる。
アバッキオはそれを睨み付けた。



<fine>


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