NOVEL01

□白日の白日の 前
1ページ/2ページ

※もしも吸血鬼化がジョルノに遺伝したら。





☆☆☆

大きな木の扉を開き、ミスタは白く照り返すコンクリートにブーツの足を下ろした。
初夏の陽気。今日は暖かくなりそうだった。広く手入れの行き届いた庭の上に抜けるような青空が広がっている。

フーゴが車庫から黒い車を出してくる。
スモークガラスを開けてミスタに手を降った。
未だ傷一つないメルセデス。ミスタはアルファロメオの方が好きだったが、どっちにしろミスタは動かさないようフーゴに言われている。傷だらけの高級車はみっともないのだそうだ。但し弾痕を残すのは構わない。
そのたび、新しいのに乗り換えましょう、もうミスタにヤられちゃいましたよ。とフーゴがバカ高い高級車をジョルノに選ばせるのだった。ジョルノ自身は昔から車や機械には無関心でその分野ではフーゴの言いなりになっている。
ミスタは腕時計を見た。式は何時からだったか。フーゴが怒ってる様子はないから多分大丈夫なのだろう。
明るい外を眺めていたせいで暗く影になって見える室内から、スーツを着た長い足が現れる。190を超える程の長身のブロンドの男。先日21になった若きドン・パッショーネ。

ジョルノと同い年の、かつてのミスタ達のマドンナから結婚式への招待状が届いた。数年ぶりの便りに三人は色めき立った。フーゴは何も言わずにその日と前後一日の全ての予定を見事に整理してみせた。
トリッシュに最後に会ったのはまだジョルノがミスタより小さかった頃だ。
もう会うことはないと思っていたし、彼女が幸せに暮らしていける為にはそうするのが最善だった。
ミスタは10cm以上も上にあるジョルノの顔を見上げて広い背中を小突く。

「うんこ終わったか?」
「…してませんよ」
「なんだ便秘か?夜型生活だからなー。ボス」

ジョルノの青白い顔が日に照らされ眩しそうに上下の睫がくっついた。その睫も、眉毛や微かな産毛でさえも透き通るような金色だ。光に透かすとそれが際立った。髪の縁がくっきりと白く輝いて眩しい。
久し振りに昼間から外に出るとあって、ジョルノが眠そうに目を擦った。最近、この時間はまだ眠っていたのだ。
左右対称の美しい庭を抜けて黒い車の元へ向かう。

「遅いですよ」
「わりーわりー」

フーゴが窓の隙間からミスタを睨んだ。
ミスタがドアに手をかけて、熱さに驚き離した。色と日差しですっかり太陽光を集めて熱を持っていたのだ。

「あっちー。おいジョルノ触ってみろ。これ。もう夏だな」
「早くしてくださいよ!ミスタ!…」

フーゴが運転席の窓を全開にしてがなった。言われた通りにベンツの屋根を思い切り撫でさすってみているジョルノをミスタが口を尖らせて後部座席に押し込むように座らせる。
長い足を折り畳むようにシートに座ったのを確認してドアを閉めようとしたミスタの動きが止まった。

「それどうした?ジョルノ?」

ドアの前に屈んだミスタの体で影になったジョルノの白い頬に、日に焼けたような赤みが刺していた。薄暗くてよく見えない。どうしたのかと触れてみると、爛れて崩れた皮膚の感触。

「何ですか?」
「見せろ。」

驚いてそのまま後部座席に乗り込み、乱暴に顔を此方に向けさせる。顎を掴んで首を傾けさせると、外に露出した部分全てが赤く焼けていた。
痛みは無いのかジョルノは不思議そうに横目でミスタを見た、差し込んできた朝の光に一瞬、目を細める。
次の瞬間、う、と小さく呻いてジョルノが顔をしかめた。右手で自分の鼻に触れる。その手にも同じ炎症があった。
みるみるうちに赤みが強くなり、広がっていく。火傷のような炎症だった。

「どうしました?」

もたつくミスタに噴火寸前のイライラした様子で振り向いたフーゴの表情がさっと消える。
胸元から首、頬から額にまで朱が走りまだらに炎症が起こっている。痛々しい見た目にフーゴは唇を噛んだ。

「…戻りましょう。ボス。」
「大丈夫です。これくらい…」

ジョルノ。とミスタに制されジョルノは口を開きかけて、ふてくされたように頭を抱えた。
ミスタが携帯電話を取り出しながらドアを閉めるとフーゴはくるりと車の方向を変える。
玄関扉までの短い距離に小刻みに揺られながら、ミスタは俯くジョルノの首筋のをじっと見た。さっきよりひどくなったように見える。祝い事に出掛けるわけにはいかない状態だと判断して携帯を開く、招待状に手書きで書きこんであったトリッシュの番号をフーゴが独り言のように暗唱した。



 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ