心の中、透かしてよ、
□11、アタシの色
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病院とは、どうしてこんなに無機質で寂しい場所なんだろうか。
病室の外、特有の長細い椅子に腰掛け、アタシは溜め息を吐いた。
あの後、病院に行って優一さんにどうにかしてもらった。
どうにか・・・の部分はアタシもよく分かんなかったのでスルー。
で、結局意識が戻るまで病院で様子を見て目が覚めた後、いろんな検査をするらしい。
気絶するほど頭を強くうったんだ。
それくらいが普通だろうか。
「和奏さん・・・」
不意に声が聞こえ、そっちを振り向くとあの人がいた。
「・・・優一さん」
アタシがその人の名前を呼ぶと、彼はニッコリ笑った。
「今日はありがとう。京介をここまで連れてきてくれて・・・」
そう言う優一さんはどこか寂しげだった。
───そりゃそっか。
弟が倒れたら誰でも心配になるか。
「・・・いえ、いいんです」
巻き込んだのはアタシ。
悪いのはアタシ。
これくらいしないと、いけないと思った。
「今日はもう遅い。あんまり暗くなると両親も心配するだろうし・・・。和奏さん、京介のことは僕に任せて君はもう帰った方がいいと思うよ」
優一さんにそう言われ、外がもう暗いことに気づく。
この世界にアタシの親なんていないけど。
帰らなくちゃ流石に不味いな。
「・・・はい。じゃあお願いします」
アタシは椅子から立ち上がり、頭を軽く下げた。
優一さんは微笑むと、手を振ってくれた。
エレベーターの方へ向かって歩き出す。
やっぱり、ここは白い。
あの時の、心みたいに。
***
もう心は決まっている。
誰の反対もなければ、アタシはそうするつもりだ。
所詮、ここはアタシの夢。
それならアタシは好きなように。
アタシの、好きなように。
アタシはここにいる。
身体は向こうにある。
アタシは、
アタシは、何色にも染められないんだ。
それならアタシはどうなってもいい。
どうせ、何色にも染められなんかしない。
────染めることなんてできない。