心の中、透かしてよ、

□9、消滅なんて関係ないけどね。
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試合が引き分けで終わったグラウンドは微妙な空気に包まれていた。

アタシが戻ってくると、グリードが笑い始めた。

「にゅふふ・・・残念だったぬ、勝てなくてー。まぁ最も僕も油断してたんだけどね。・・・和奏椿?」

そう言うと、こっちを見て口元を歪ませた。
相変わらずあの不気味さは健在のようだ。

「ま、いいよー。次きたときには僕たちが勝つからねぇ」

次・・・ってまた来るつもりなのか、コイツは。

そうアタシが思った瞬間、声が響き渡った。

『その必要はない』

「!?」

アタシだけに聞こえてんのかなーとか思ったけど、何かみんなにも聞こえてるらしい。

まぁシロだと思ったら違う人だったんだけど。

少女の声のような少年の声のような───。
中性的な声だな・・・。

「う、なっ、どういうことだぬ!?」

その声で慌て始めたのは、グリード。
そしてグリードの周りにいた10人が音をたてずに消え去った。

『お前は弱い。あっさり秘密を知られるなんて弱すぎる。・・・残念だがな』

「ひっ・・・あっ、や、やめてっ!!」

怯え出すグリード。
一切感情がこもっていない声。

先程まで自信満々に話していたグリードのこんな姿を見て、アタシ達は何が何だか分からなくなってきた。

「・・・どういうこと?剣城」

「俺が知るか」

あっさりと跳ね返された・・・。

『・・・さよならだ。グリード』

そう言いはなった声に、グリードの恐怖は最高点まで登り詰めた。

さよなら・・・?
まさか、いやでも。
イナイレならやりかねない・・・かもしれない。




───グリードの体から泡が溢れ出す。

・・・いや、溢れ出したんじゃない。
正しくは消え始めているのだ。
足がどんどん泡になって消えていく。

その光景には誰もが息を呑んだ。
驚きを隠せなかった。

「うっ、ぐぁ・・・あ・・・」

グリードの声から漏れるうめき声。
思わず耳を塞ぎたくなった。

グリードの体が肩まで消えた。
誰も、止めるすべを持たない。

・・・いや、誰もが今ここにある状況を理解しきれていない。

「和奏・・・椿っ・・・!!お前のせいでぇ、お前のせいでぇっ!!」

その言葉はアタシの心に突き刺さった。
アタシ・・・そうか、グリードの心の謎を解いたから・・・。

いくら敵だとはいえ、罪悪感が心を取り囲む。
・・・最悪だ、こんな気持ち。

グリードの目には最早憎しみの色しかなかった。
・・・いや、そこには物欲しげな表情も見られたが。



グリードの体は跡形もなく消え去った。
泡が宙に浮かんでいる。
その泡がグリードがいた証拠だ。
──その泡も、いずれ消えてしまうのだろうか。







時間が動き始め、止まっている人は歩き出し、時計も動き始める。

しかし、アタシたちは逆に時間が止まったかのように、そこに立ち尽くすしかなかった。

グリードの可愛くも恐ろしい声を、思い出すことは出来なかった。
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