心の中、透かしてよ、
□8、欲しい物は3つまで!!
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「あぁあああ・・・」
アタシは盛大にため息をこぼすと、空を見上げた。
時刻は変わり、今は放課後。
部活の時間だ。
何だか今日は疲れた気がする。
普段は疲れなんか一切たまらない。
だが今日は朝から不運が続いてる気がする。
朝、登校中犬に追いかけ回されたり、学校で先生に荷物運んで、とか言われるし剣城には蹴られるし。
思い出してもきりがないのは確かだ。
今日は絶対悪運の強い日だろうな・・・。
夕食はコンビニ弁当か何かで済ませることにしよう。
─────その時だった。
1カ所が急に光り始める。
部員全員の目がそっちへ集中した。
その光から現れたのは、予想通りというべきか、短い髪の少zy・・・少年───グリードだった。
「にゅふふー、お久しぶりだぬー、雷門中サッカー部の皆さん」
そう言ってグリードは笑う。
相変わらず、かわいい顔をしていてもどこか冷たさを感じる。
「お前はっ・・・!!」
神童さんがグリードに向かって叫ぶが、グリードはにゅふふと余裕そうに笑う。
「今日はちゃんと君らに用があるんだおー。・・・サッカーしよう?」
そう言い放ったグリードは指を鳴らす。
瞬間、グリードと同じユニフォームを着た10人が現れた。
みんな見たこと有るような感じの空気になってるけど、アタシは見たことない。
きっとアタシが気絶してた時にでてきた人たちだろう。
「・・・目的は何だ」
円堂監督がグリードに向かって言うと、グリードは待ってました、というかのように笑った。
「もしー僕たちが勝ったらその女の子────和奏ちゃんは僕がもらうよぉ!!あ、あと剣城くん、君が持ってるあの真珠・・・もね?・・・あーでもでもぉ、あれも欲しいし・・・いっぱいあるお!!」
その言葉にたじろいだのは、アタシと剣城。
本当にこの子は何もかも知っているのか?
何で知ってるんだ?
・・・というか1回勝っただけでそんな要望するとか・・・。
欲張りだぁ・・・この子( ・_・;)
ほら魔神のランプもさ、3つまでって言うじゃん?
「・・・和奏」
円堂監督がいきなりアタシの名前を呼ぶ。
アタシはその声に気づきベンチを立ち、監督の横に立った。
「・・・はい」
「お前、何か隠してるだろ?」
・・・まぁ分かりますよねー・・・。
普通のマネージャーだったらあんなにしつこく言われるはずがない。
それに、アタシが転入してきてからいきなりおこった事件だ。
怪しいのはアタシだろう。
でもアタシだってよく分からない。
グリードが何者なのか、とか何でそんなに必要としてくるのか・・・。
とにかく、今監督に全てを打ち明けたくない。
じゃあ何でアタシは剣城には話したんだろう。
・・・アタシが剣城を心のどこかで好きだと思っているから?
確かにアニメキャラとしては好きだ。
でも、恋、とは違うんじゃないか。
アタシが剣城に抱いてる感情は「like」なのか、「love」なのか。
・・・きっと分かってるんだ。
認めたくなかっただけで。
架空のキャラに恋をした、なんて認めたくなかったんだ。
────でも今剣城は架空のキャラじゃない。
ちゃんと目の前にいる。
ちゃんと触れるし、会話もできる。
─────確かに存在している。
アタシは剣城に蹴られたところをチラッと見る。
うん、大丈夫。
ちょっとだけ赤くなったままだ。
そして監督の方を向いた。
「・・・今は、まだ。すいません」
「・・・そうか。言えるようになったら言ってくれ」
監督がニコ、と笑った。
やっぱり、今日は悪運の強い日だ。
ベンチに座りながら、そんなことを考える。
剣城に対しての自分の気持ちを理解するなんて。
グラウンドでは試合が始まろうとしていた。