心の中、透かしてよ、
□7、ゆめまぼろし
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「ぶぇっくしょぉい!!」
季節は春だというのに、風邪をひいたのか、くしゃみがものすごくでる。
誰か噂してんのか?
学校からの帰り道。
愛佳とは喧嘩をして、今日は1人で帰っている。
・・・最悪だ。
欠伸をすると、体を伸ばしてみる。
ツインテールが少し揺れて、まだブカブカのセーターがピシッと張る。
・・・仰け反りすぎ?
アタシはそんなことを思いながら服を整えた。
・・・実際アニメみたいに中学からリボンつける学校って少ないんじゃないかなぁ・・・。
ここら一帯では全然見ない。
この間入学式を終えて、制服も見慣れた。
・・・もう少しかわいいものがよかった。
まぁ言ってもどうにもならないけど。
アタシの大好きなアニメ、「イナズマイレブンGO」はちょうど1期といわれるものが終わった。
2期では蘭丸さんが髪を切ったとか、新しいキャラがでるとか、いろんな噂がたっているがどれも正しいとは限らない。
いつもより剣城の活躍に期待しているのはどうしてだろう。
「眠た・・・」
アタシは目を擦ると、いつも通りの帰り道を歩き始めた。
────少しすると、見慣れたいつもの家が見えてきた。
あぁ、疲れたなー。
アタシは家の前に立つと、扉を開けた。
─────その時だった。
目の前に飛び散る赤に気づく。
痛い、
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い、
恐る恐る後ろを振り返る。
そこに人の姿はない。
あるのは、アタシに突き刺さっているナイフだけ。
力がでなくて膝から崩れ落ちた。
「・・・は」
口から漏れるのは吐息だけ。
言葉が上手く出てこない。
その時、アタシは気づいた。
あぁ、アタシは刺されたんだ。
誰かの恨みをかった覚えはない。
それに、そんな悪い道にも走ってない。
ならアタシは何で刺された?
気が遠くなる。
こんなこと、忘れてしまいたい。
この張り裂けそうな痛みと一緒に、何処かへ飛んでいけばいい。
アタシは前にこんな経験をしたことがある?
分からない────。
気分が悪いどころじゃない。
早く目の前の家の中に入り、いつも通りの生活をしたい。
あぁ。
死ぬときってこんなに辛かったっけか。
アタシの知っている「死ぬときの感覚」とは違う、気がする。
・・・アタシはそれを何処で知った?
白い、白い、部屋。
─────シロ。
天馬くんに信介くん、それに葵ちゃん、サッカー部のみんな、クラスメートのみんな、そして、剣城。
頭が割れるように痛い。
何でアタシは忘れていた?
そして今何でアタシは普通の世界にいる?
何で数日前に戻っている?
何でアタシは刺されている?
アタシは何でそれを覚えていない?
「っ・・・ロッ・・・、シロ・・・?」
これらのことが走馬灯のように駆けていった和奏の脳内は完全に停止し、その場へと倒れ込んだ。
赤い、赤い血が彼女の世界を覆い尽くしていった。