心の中、透かしてよ、
□7、ゆめまぼろし
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"ジリリリリリ・・・"
目覚ましが耳障りな程、大きな音で何回も鳴り続ける。
あぁ、うるさいな、もう。
瞼が重いのはいつもと同じで、もう嫌になった。
「椿ー!!起きなさい!!」
「・・・はぁい」
大声でアタシの名前を叫ぶ母親に、けだるそうに返事を返し時計を止める。
「ん・・・」
いつもより頭がボーッとする感じ。
何だろう、何か違う。
その違和感よりも今は学校。
和奏椿は遠くなりそうな意識を何とか保ちながら、ベッドから降りた。
***
「おっはよ!!椿」
「おー、愛佳、おはよー」
通学路、幼なじみの愛佳に会った。
「もー聞いてよー。あいつさぁ・・・」
「はは、それはご苦労様なことで」
愚痴を聞くのももう慣れた。
あんまり嫌いじゃない。
あぁ、そう言えばあの日アタシは愛佳と喧嘩したから、1人で家に帰ったんだ。
────────あの日?
あの日っていつだろう。
よく思い出せない。
思い出したくもない。
「?大丈夫?椿」
「あ、ああ、大丈夫、全然おk」
アタシは返事を返して空を見る。
桜が綺麗だ・・・。
春と言っても少し肌寒いこの季節、このセーターは丁度いい。
・・・ちょっと地味だけど。
目の前にはアタシ達が通う中学校。
今日も平凡な日が始まるのだろうか。
そう思うと、溜め息が零れた。