心の中、透かしてよ、
□7、ゆめまぼろし
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まず、アタシはやっぱりここに来る前刺された。
つまりそれがトリップフラグだったわけだ。
人は嫌な記憶を忘れていく。
だからアタシも覚えてなかったとか。
まだアタシの身体は向こうで生きてる。
かなり弱ってるみたいだけど。
で、シロがこっちに呼んだのは本当。
死にそうになっているアタシの意識をここに呼び出した・・・らしい。
で、グリードはアタシを何故か狙っている。
アタシの能力を知り、手に入れようと思っているとか。
「つまりこの世界は君の夢、みたいなものなんだよ。さっき君の意識を呼んだって言ったろ?」
「・・・はぁ?」
益々訳が分からない。
このイナズマイレブンGOの世界はアタシの夢?
どういうこと?
「君はこの世界のアニメが好きだったんだろう?」
「うん、そりゃあもちろん」
「じゃあそのアニメには"君"という存在はあったの?」
「・・・あ」
「・・・つまり、君が見ているのは君の夢の中の世界────パラレルワールドという考え方もでき
る」
シロがいつにもまして説明口調で、アタシに全てを語る。
・・・先を聞きたいような聞きたくないような。
「つまりこの世界は幻でしかないんだ。恐らく君が消えればこの世界は消える」
「・・・じゃあ何でアタシは使命なんかを・・・」
「それが世界の望むことだから、かな?簡単に言えば」
簡単じゃねぇよ、クソシロっ・・・!!
「この機会だ。君に最後の決断をしてもらおう」
「・・・最後の決断?」
アタシが聞くと、シロは「うん」と返事をした。
「今ここで君の意識を向こう側の君の身体に戻して、君を生き返らせることができる。・・・まぁ今までのこの世界でおきたことも忘れてしまうし、この時間軸も消えるんだけどね」
「えっ・・・そんなことできるんだ、アンタ」
「失礼な・・・仮にこれでも神だぞ、僕は」
「はいはい、すいませんね。・・・で?」
「もう1つはここに残る。向こうでの身体は消滅してしまうけど、こっちに残ることはできる。・・・最も、グリードとかいう人たちに狙われるのは確かだけど」
「・・・」
思わず黙っていた。
答えが見つからない、と思ったんだ。
そりゃあある一定の人なら現実に帰って、使命とか何だの放り投げたいと思うだろう。
・・・でもアタシはどうしてもこのシロをほっておくわけにはいけない、と思った。
それに、すでに友達ができた世界から帰りたくはない。
でも、愛佳や、母親にまた会いたいという気持ちもある。
これでもアタシも中1。
そんな年で「死」なんか体験したくない。
でも───剣城と一緒にいたい。
アタシは、どうすればいいんだろう─────。
「・・・大切なのはどうすればいいかじゃない。自分がどうしたいのか、だ」
「・・・え?」
突然聞こえた声に顔をあげる。
それは間違いなくシロの声の筈なのに、何かが違う。
何処か温かくて、安心するような─────。
「アタシが、どうしたいか・・・?」
「・・・うん」
アタシは、アタシは。
「どっちも、捨てたくないに決まってるじゃん・・・」
今までの思い出が走馬灯のようにかけ、目から溢れるのは涙。
あぁ、自分ってこんなに涙もろかったっけ。
そう思いながら溢れ出す涙を止めようと、目を閉じる。
そこに浮かび上がってくる男の子────。
君は、一体───────?
「・・・やっぱり、そういうと思ってその対策も整えておいたよ。本当に暫くの間だけど────向こうの時間を止めておいた。これから20日間、もう1度この世界で過ごして考えておいで。─────20日後、また決断をしよう」
最後の決断にならなかったね、と笑いながらシロは言うと、スッと姿を現した。
気配を感じた和奏は涙を拭き取り、その姿を見る。
でも見えない。
涙の所為なのか、視界がぼやけて見えない。
男の子。
目の前にいる男の子は和奏をじっと見つめていた。
「バイバイ、また夢の幻のなかで」
そう少年が言った瞬間、和奏の意識は簡単に途切れ───────深い暗闇に吸い込まれていった。