「ねぇロイ、暇。兄貴もいないしどっか行こう」

フェイレンのそんな一言で、ロイとフェイレンは二人で城内散策をしていた。



こうてきしゅ?


ロイも暇だったし、最近は影武者の仕事や王子の手伝いでフェイレンと過ごすことも、乱陵山にいたころと比べて格段に減っていた。良い機会だと思い了承する。

二人は店を開いている仲間達の所に冷やかしに行ったり、ゲームをしたり。
城内をしばらくブラついていると、ロイの腹の虫がぐぅと鳴った。

「なーフェイレン。腹空かねぇ?飯食いに行こうぜ」
「あぁ、いいよ。行こ行こっ」

腹を擦るロイに、何故だか終始ご機嫌のフェイレンがにこりと笑ってロイの腕を引いた。

「何か今日は機嫌いいな?」
「そう?いつもと一緒だよ。それよりロイは何食べんの?」
「オレは…カニパンチ丼にすっかな…」

そんな会話をしながら食堂に向かう。

「あ」
「うわぷ…何だ?」

テーブルなどが置いてある場所に差し掛かった時に、ロイの腕を引いたまま前を歩いていたフェイレンが急に止まった。
ロイはフェイレンにぶつかり、いぶかしげにフェイレンを見た。

フェイレンは気まずげな顔をして前をみていたので、その視線を追った。

「なんだ、王子さんとリオンじゃねぇか。よぉ!」

視線の先にいたのはテーブルに座っていた王子とリオンだった。ロイは二人に声をかけた。

「やあ、ロイ。それにフェイレン。二人なの?珍しいね」
「こんにちは、ロイ君、フェイレンさん」

かけた声に気づいた二人がにこりと笑って返事をした。…が、二人とも視線を下に下げて見つめていた。

ロイも同じように視線を下げると、そこには自分の腕とそれを掴むフェイレンの手があった。

「あ、アンタらも今から飯?」
「わ、ちょっとロイ!」

ロイは慌ててフェイレンの手をほどき聞くと、フェイレンがいきなりの事に抗議の声をあげた。

「ふふっ。ロイ達も一緒に食べよう?ねぇ、リオン」

王子がその様子を見ながらクスリと笑って頷き、リオンにも同意を求める。

「あ…は?…は、はいっ!そうですね!」

リオンは、固まったようにロイの腕を凝視していたが、はっとして顔を上げ頷く。
そんなリオンの視線には気づかず、ロイはリオンの返事を聞いて、嬉しそうに頷いた。

「いいのかっ?じゃあフェイレン、王子さん達と飯食…」

「いい」

ロイの言葉を遮るようにフェイレンが言った。
先程とははうって変わっての不機嫌な表情にロイは驚いてフェイレンを見つめた。

「やっぱり今ご飯いらない」
「…どうしたんだよ、フェイレン?」
「王子さま達の邪魔しちゃ悪いじゃん。行こ」
「お、おいっ!?」

ロイはフェイレンに強引に腕を組まれ、元来た道に引っ張られた。
それを見ていたリオンが勢いよく席を立ち上がる。

「待ってください!別に邪魔ではありませんっ!ね、ねぇ王子?」
「うん、そうだね。…面白くなりそうだな」
「はい?」
「何でもないよ。フェイレン、遠慮しないで?」
「あたしは別に遠慮なんかしてねーし」


王子にも引き止められ、フェイレンがピタリと足を止め、振り返る。相変わらず腕を組んだままなので、ロイはされるがまま振り回されていた。

そんなロイの様子を見てリオンは眉を潜める。

「ロイ君、さっきから何ですか?振り回されてだらしのない」
「ええっ!?」

ロイはいきなり叱られ困惑した。そしてリオンの言葉にフェイレンも反応する。

「何なに、アンタ腕組んでるのが羨ましいんでしょ」
「おい、フェイレ…」

フェイレンはわざとロイにくっついてリオンに見せつけた。
抗議しようとしたロイは一睨みして黙らせる。
リオンは頬を真っ赤にして体をわななかせていた。

「ななな何を…私が言っているのは、そのようにたるんでいたら王子の影武者など務まらないと言うことです!」
「はっ、何が影武者がーだよ。どーせ腕組んだりできない負け惜しみだろ」
「!!それくらいできますっ!」

言い合いの末、フェイレンの挑発に乗ったリオンは、つかつかと王子の隣に移動すると、座っている王子の腕を無理矢理組んだ。

「そっちかよ!」
「あらあら…」

ロイはツッコミを入れつつがっくり肩を落とし、王子は苦笑した。
リオンとフェイレンは睨み合いバチバチと火花を散らしている。

「王子さん、どうにかしてくれ…」
「仕方ないなぁ。はーい、二人ともそこまで。ぼくお腹空いちゃったよ」

王子の一声でリオンとフェイレンはお互い手を離した。
ロイがほっと息をついたその時、リオンが歩み寄って来た。その表情はどこか思いつめたようである。

「リオン、どうし…」

た?とロイが聞き終る前にリオンに腕を掴まれ引っ張られる。

「お、おい?」
「なっ…」

困惑し引っ張られたまま、王子とフェイレンを振り返ると、王子は面白そうにリオンとロイの様子を見ていた。フェイレンは状況についていけないようで、ポカンと口をあけている。
そんな二人がどんどん遠ざかり、見えなくなった辺りでリオンは足を止めた。

「ロイ君…ロイ君はフェイレンさんと…」

振り向かないまま言いかけて口をつぐむ。

「リオン?」

ロイが名前を呼ぶとリオンは、はっとしたように顔を上げ、慌ててロイを掴んでいた手を離す。

「すみません!すみません…私何だか二人を見ているといてもたってもいられなくて…」
「え?……っ!!」

顔を真っ赤にして頭を下げるリオン。
ロイは目を瞬かせたが、リオンの言葉を頭で反芻させてみると、顔に血が昇るのを感じる。

「私…フェイレンさんと言い合いするつもりなんて…お腹が空きすぎて苛々していたんでしょうか…」

リオンの一言にロイは足元を滑らせる。
頬に手を当てしきりに首を傾げるリオンの肩を掴んだ。
ロイは意を決してリオンを見る。

「ヤキモチ…だったりしたらいいな、なんて」
「?ロイ君は焼き餅が食べたいんですか?」

ロイは見事打ち砕かれた。体の力が抜けその場にがくりと座り込む。
違う、そうじゃないんだ…と床に向かって呟くしかなかった。

「ロイ君、そんなに空腹で…立てますか?」

顔を上げるとリオンが、戻りましょう、と手を差し出した。
ロイは苦笑いしながら手を取り立ち上がる。
手を離さないまま…否、意地でも離すものかと心に誓い歩き出した。


「リオン、ヤキモチならあんたに妬いてもらいてぇな」
「ん?今度焼きましょうか?ロイ君には特別に磯辺焼きにしましょう!」
「あはは……はぁ…」


END



お待たせしましたー!
というかグダグダに…(汗)
アンケートにいただいたコメントを反映…しきれておらず申し訳ないですー!!
しかし!楽しんでいただけたら幸いですっ。



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