――ガチィッ――
ミアキスの小刀と王子の三節棍が激しい音をたてて噛み合う。
「…お、うじ、また強くなりましたねぇ。でも…まだまだです、よっ!!」
ミアキスは武器越しに見える王子に笑いかけると、王子の足を内から外へと払った。
「ぅわっ!!」
王子はあっさりとバランスを崩し、尻餅をついてしまった。
「ドラートでは、一本取られましたが、まだまだ負けませんよぉ」
「ミアキス…いつの間に鍛練したの?前より全然強いよ」
王子は尻餅ついでにその場に寝転び、ミアキスに聞いた。悔しさ混じりに小さく吐息を吐く。
その様子を横目で見ながら、ミアキスは小刀をしまいつつ首を傾げた。
「そうですねぇ。王子があちこち軍のために奔走している間でしょうか。カイル殿と鍛練してたんですよぉ」
「カイルと?…くそーカイルめ、何も聞いてないぞ」
眉を潜めて呟く王子を見てミアキスは微笑んだ。
久々に王子と手合わせができたし、一本取ったことで女王騎士としては面目躍如である。
「ねぇ、いつもカイルと鍛練してるの?」
王子は体を反転させうつ伏せになり、頬杖をついてミアキスを見上げた。
ミアキスは王子の隣に腰を下ろす。
「王子、もしかしてヤキモチですかぁ?」
「べぇつにっ!」
「あらあら、頬膨らませて。姫様そっくりですねぇ」
久々に見る王子の歳相応の表情に、ミアキスは自然と顔をほころばせた。
もちろん、嫉妬されたことも嬉しかった。
その上こんな表情も見れるのだったら、定期的に嫉妬されてみようか、等とよくない考えも浮かんだがすぐ打ち消した。
「兄妹だから似てるのは当たり前!それよりどうなの?」
「どうなんでしょうねぇ」
ミアキスは悪戯心が押さえきれず、答えをはぐらかしながら空を見上げた。
明るい晴れた空だった。隣には王子。
ここ何日かで一番の幸せな日だった。力一杯満喫しようと心に誓う。
「そんな反抗的な態度にはこうだっ」
「!!?」
ミアキスが王子の言葉を理解する前に、横から手が伸びてきてミアキスを引き倒した。
突然の事に反応しきれず、されるがままに地面に転がる。
文句を言おうと口を開けたところで、満足げな顔をした王子が顔を覗かせた。
「お仕置きっ」
「おぅじぃ〜」
今日の王子はなんだが子供っぽい。
それはいい。いいのだがやられたらやり返さねば、歳上の威厳もあったものではない。
ミアキスはそんなことを思いながら、反撃を開始した。
「わーっ!!ミアキスッ!?」
両手を伸ばして、上から覗き込んでいる王子の首に回すといっきに自分の方へと引き寄せたのだ。
つまり、王子と抱き合っている。
「ちょ、ちょっとミアキス!」
「はい、何でしょう?」
慌てた様子でジタバタする王子を気にすることなく、回した腕に力を込める。
これだけ近いと、赤面しているであろう王子の顔が見られないのが残念だった。
「もー何なのいったい」
「お仕置きのお仕置きですよぉ」
「何それ」
もがくのを諦めたのか、おとなしくなったので、ミアキスは腕をゆるめて王子を見た。
嬉しいような、困ったような、なんとも複雑な表情をしていた。
「お仕置きになってないよ…喜ばせてるし」
「あらぁ。まあ、いいじゃないですか」
「うん、いい」
そういうと、二人は笑いあった。
ミアキスは決意したとうり、幸せを満喫している。
毎日こんな時間があるわけじゃないし、次は何時こうやってじゃれ合えるか分からない。
たわいもない出来事だからこそ絶対忘れたくない。
そして、また頑張るのだ。
「はぁ…そろそろ時間だ」
「そうですねぇ。でも…」
「うん。もう少しこのままでいるよ」
そう、頑張る。
いくら側にいられなくても、またこんな日が来ると信じて。
ミアキスは王子の体温を感じながらまた空を見上げ、新たに決意を固めたのだった。
END
久々…でもない気がしますが、王ミアです。
今回、自分的にかなーりの冒険でした。
どこが?というツッコミは心の中でお願いします(笑)
実はの話、途中からすっかり書き換えました。
元の話は…違うストーリーにするか、ボツ行きと思います。
カイルとの疑惑は…晴れないままでしたね(笑)