小説部屋
□和み
1ページ/6ページ
「あ…、あの…っ手塚さん!」
校門を出たところ、後ろから誰かに呼びかけられ、俺は足を止めて振り返った
「お前は…確か六角の葵だったな」
「は、はい!急に呼びとめちゃってすみません!」
葵は小走りで駆け寄り、頭を下げた
「どうした?こんな所で何をしている」
「えっと、実は…その…手塚さんにお願いがあって…」
そう呟き、ギュッと自分の制服の裾を握り締めた
「手塚さん!僕の先生になってくださいッ!!お願いします!!」
・・・・・。
「…すまんが、どういうことか詳しく説明してくれないか」
「あっ…そ、そうでした!すみません!!」
「いや。ゆっくりで構わない、理由を話してみろ」
落ち着くよう促すと、葵は頷き 小さく深呼吸した
「僕、ずっと手塚さんに憧れてて、手塚さんみたいな部長になりたいんです!…でも、僕は部長としてもテニスプレイヤーとしてもまだまだだから…」
僅かだが、声が震えている
「つまりは 俺に助言してほしい、ということか」
「は、はい!人に頼るのは良くないってわかってるんですけど、自分じゃどうしたらいいかわからなくて…お願いします!!」
「………」
「や、やっぱり…ダメですか?」
「………」
必死さと概ねの事情はわかったが、安易に受け入れられる願いでは無い
だが、次に自分が口にした答えは、その考えとは異なるものだった