小説部屋

□play tricks
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今までいろんなヤツに会ってきたけど、ここまでよくわからないヤツは初めてだった

無駄に元気だし、声でかいし…

だけど、変なヤツだと思いながらも、何故か俺も冷たく突き放せずにいた



「あっ、越前くんだ!!」

学校から帰る途中、反対側の歩道から聞き覚えのある声が聞こえた


「この声って…」

おそるおそる目をやると、予想通りの人物が俺に向かってブンブンと手を振っていた


「…あんた、こんなとこで何してんの?」

「テスト前で部活休みだから、ちょっと遠出しようかな〜って。越前くんは?」

「うちもテスト前」

「そっか〜、じゃあ一緒だね!」


単にお互いテストの日が近いだけなのに、葵は楽しそうに笑う


「テスト前なのに、帰って勉強しなくていいわけ?」

「Σえっ!?それは…えっと…」

俺の言葉に、さっきまでとは一変して、急に大人しくなった


ホント、わかりやすい…

あからさまな反応に、思わず口元が緩む


「ま、テストまで後何日かあるわけだし、いいんじゃない。少しくらい遊んでても」

「本当っ?」

葵は目をキラキラ輝かせて、俺を見つめる

頷くと、また嬉しそうに笑顔を浮かべた



「あっ、そうだ!越前くんの家ってこの近くなの?」

思いついたように葵は俺に尋ねた

「…もしかして、俺ん家に来る気?」

返事の代わりに、期待の眼差しが向けられる


はぁ…。どうせ断ったって無駄だろし…


「好きにしなよ」

「やったぁー!!」

周りには人もいるっていうのに、葵は気にせずはしゃぐ


「そうと決まれば早く帰ろ!越前くん♪」


「ちょ…っ、道知らないのに引っ張るなって!」


そんなことおかまいなし!と言うかのように、葵は俺の手を引いて走り出した

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