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□thirtieth.
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 親不在ではあったが友人同士での教科書買いというのは割と不自由無く円滑に進んでいた。

一度は見た事がある顔ぶれとすれ違いながらも決して迷子にならないようにと、レギュラスとメリッサの小柄な二人を中心に置き四人で囲む厳戒態勢で進む。

流石にやりすぎでは無いかとレギュラスが口に出したが殿を務めていたシリウスに「俺達がしたいだけだ」と言われれば……黙るしか無い。

甘んじて受けるむず痒さはまだまだ慣れることは出来ないとレギュラスは改めて思う。


 先頭で皆を率いるジェームズといえば必要な物が効率よく入手できるようにと、網を範囲を広げて投げるように近場から攻めていく。

大量の荷物はその度に配送を頼み六人はほぼ手ぶらでダイアゴン横丁を練り歩く。ほぼ全てを入手できた所でジェームズは足を止め、ニンマリと悪戯に魅入ってしまった笑みを浮かべ振り返って楽し気に言う。

「さあ僕等の聖地へと行こうか」


 その言葉に悪戯仕掛け人のテンションが一気に上昇し、目的地までの距離が少々早歩きになったことが彼等の聖地への思い故なのだろうか。

だが目的地らしき場所に近付くほどレギュラスとメリッサは顔を見合わせ納得し頷き合う。傍から彼等が呼ばれている名称に相応しい店は数多の生徒を子供心をくすぐる名店。

それが見えた途端に殿を務めていた筈のシリウスが抜け駆けするように皆を追い越し全力疾走で入店するので、次々に駆け出していく悪戯仕掛け人。

石畳の微妙な段差に蹴躓きながらも最後にピーターが駆け込んでいく後ろ姿を黙って見ていた二人は苦笑しながらもゆっくりとした歩みで入店する。


 途中までは兄貴分らしさが出ていた面々を一気に子供へ引き摺り込む魔の店は、目に突き刺さる赤い蛍光色を点滅させ興味が薄い二人さえも歓迎した。


ーーようこそ!ギャンブル&ジェイブスいたずら専門店へ! 







 兄達とは違い悪戯には対して興味の無いレギュラスとメリッサは、他の客のように好奇心に感極まる声ひとつ出さずに、ただ店の奇抜な商品を眺め退屈そうに会話をする。

「……悪戯に興味がある人なら楽しい場所でしょうけれど僕はあまり引かれませんね。メリッサはどうです?」

「同じ気持ちよ。レギュラス君も私もこっちの興味は全部お兄ちゃんに取られてしまったのね」

 酷くつまらない様子のメリッサは対して心も篭っていない声色で言う。普段グリフィンドールらしくもメリッサの好奇心の強さに見慣れたレギュラスはその様子にギャップを覚える。

本当に興味が無いとこんなに冷めた態度を取るのか。

誰かが苦労して作成した積み木のお城をどうでもよさそうに指ひとつで崩壊させる残酷さを感じ得るメリッサに、彼女が身に纏う純白がくすんでいってしまう気さえする。

レギュラスの視界の隅にいる興奮した状態の兄達を見つけ、まだまだ時間がかかりそうだと判断し彼女が本来持つ、生きる星々をはめ込んだような好奇心に光るハシバミ色の瞳の為に。

顔を覗き込んでメリッサの好奇心と自分自身の好奇心を揺らすワードを囁けば、この店で一番惹かれるとびきりの煌めきが生まれた。


「僕とデートしに行きません?」

 途端に華やぐ笑みも開花した事にレギュラスは満足気に微笑み、そっと彼女へ手を差し伸べた。



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