番外編

□レンゲソウの花束
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1月31日






am07:13


黒子テツヤは本日14歳の誕生日を迎え朝一番に家族からのクラッカー攻撃に巻き込まれた事が腑に落ちなかったが誕生を祝われる事が純粋に嬉しくて頭に乗っかるクラッカーの中身を払い学校へと向かう








黒子は登校中事故にも人にぶつかるという事も無いと自負してるので日課の読書をしながら歩く







すると突然後ろからガラ空きの背中にバシンと鈍い痛みと音がして振り向く











黒「なんですか青峰くん。随分な挨拶ですねイグナイトが食らいたいんですね。では…」

青「まてまてまて!そのポーズやめろ!」

黒「…仕方ないですね」










突撃してきたのは青峰。現在は冷や汗で黒さが薄くなるかと思ったが気の所為だった様だ


イグナイトの構えを解くと大袈裟に安堵の溜息を吐き黒子の隣に並び歩き始める。少しの間をおいて黒子も歩き始めた

青峰と一緒に登校するなら読書はできまいと熟知してる為カバンに仕舞う










青「なぁテツ」

黒「なんですか」

青「右と左どっちいい?」

黒「は」

青「うぃっち!」

黒「無理に英語使おうとしなくていいですから。なら左で」












左な!

背が高い割に少年の笑みを失ってない青峰はわくわくと自らのズボンのポケットを探り発見したらしく勢いよく取り出す


黒子からは背の関係で中身がよく見えない。首を傾げ中身を聞いてくる黒子ににやりと笑い左手を前に出してくるので反射的に両手で受け皿を作る











青「ぜったい大切にしろよ…じゃあなセミ助!幸せになっ」

黒「せみすけ?…___」











何かの名前を涙ぐみながら唱えたかと黒子の掌にセミスケと呼ぶ何かを置き走り去った青峰を黒子は呆然と見送る

置かれた瞬間カサッと軽く乾いた音がしたと思い本能的に背筋がぞくぞくと震えた








朝も早く青峰も走り去り立ち尽くす黒子以外がいない通学路


黒子が恐る恐る手の中を見た瞬間。通学路に声なき悲鳴が響きスズメが数羽飛び去った














am8:10






ぷんぷん


効果音がつきそうな程怒ってるとよくわかる黒子に朝練に来ていた1軍の面々は珍しいものを見たと眼を見張る






その中には黄瀬と緑間もおり互いに滴る汗をタオルで拭いながら顔を見合わせ混じり合う視線の会談の末…黄瀬が黒子の様子を見に行く結論に達する



イグナイトパスを普段の数倍の力で放ち受け取った赤司から怒号を浴びている黒子は不機嫌丸出しで赤司に噛み付く














赤「黒子!力が強過ぎだこのバカッ」

黒「煩いです。ちょっと苛々してるのでこの想いをボールに託してるだけです!」

赤「そんな歪んだ想いを受け取るこっちの身も考えろ。もういい。朝練は終わりだ」













鶴の一声ならぬ赤司の一声で他のメンバーは片付けに入り始めるのを余所に黄瀬は黒子の機嫌の悪さを悪化させない為大人し目に声をかける














黄「黒子っち…随分機嫌悪いっスね」

黒「なんですか。今の僕は身長が赤司くん以上の奴等の顔を見たくありません」

黄「!く、黒子っち〜〜!緑間っち!黒子っちの機嫌今世紀最悪っスよ」

緑「見れば分かるのだよ。赤司、我々では話も付けられないからなんとかしてほしいのだよ」

赤「俺が?」

緑「他に誰がいるのだよ」















キセキの世代と呼ばれるメンバーは現在ここにいる数名以外皆サボリでここにはいない

それに黒子が提示する赤司以上の人間はいるが以下の人間は赤司以外にはいない


消去法で自分が行くしかないのかと納得し未だ黄瀬に八つ当たりをしている黒子を横目で見る






黄瀬に膝かっくんを繰り出してる黒子の首根っこを掴みキセキ専用部室に連行

ぞろぞろと背後に高身長の2名がついてくるのが分かるのでずるずると黒子を引き摺る

バッシュが変な磨り減り方をするだろうが歩く気が無い奴に何言っても仕方ないだろう












ぷすぷすと怒る黒子を部室のベンチに座らせ赤司、黄瀬、緑間で囲うように床に座る










黄「それで黒子っち…」

黒「お黙りなさい高身長が!」

黄「まだ何も言ってないじゃないっスか!」

黒「…(ぷいっ)」

黄「黒子っちかわい…っぷぎゃふッ」







そっぽを向いた黒子から眼つぶしを食らった黄瀬を憐れむだけで救いの手を伸ばそうとしない緑間は同じく傍観してる赤司に眼で「なんとかしろ」と訴える












赤「…熱い視線送られても俺は靡かないぞ」

緑「そうか。どうでもいいから黒子をなんとかしろ。黒子マスターは世界で2人しかいないのだよ。お前もその1人なら人事を尽くすべきn」

赤「人事を尽くすべきなのだよ、だろ。緑間、お前のロッカーから例のアレ持って来い。その間になんとかするから」

緑「…なんで知ってるのだよ!?」

赤「さあね」











赤司が驚愕中の緑間を放置し自身の鞄からバニラシェイク(L)を取り出し黒子に見せつける様に横に振ると黄瀬の顔に黒マーカーで悪戯書きしていた手を止めバッと赤司を振り向く

ひっかかった、とあくどく微笑む赤司













赤「くろこ?俺からのプレゼントだぞ。欲しかったら取りにおいd…速いな」

黒「赤司くん赤司くん!バニラシェイク!イェア!」

黄「黒子っちそれ俺の名台詞!」

赤「はいはい迷台詞だな」

黄「あれ。漢字が違うっスよ赤司っちでも間違えるんスね」

緑「馬鹿か。わざとに決まってるだろう」













バニラシェイクを入手した黒子がストローを咥え中身を啜る音が響く

普段無表情な黒子がこの時だけはふにゃ、と表情を和らげる。それを見たくて仕方ない黄瀬は黒子の背後に近付きデレデレと期待で緩む顔のまま盗み見ては床にゴロゴロと転がり歓喜を叫ぶ











黄「黒子っちホント天使ッ!」










見るに見かねた緑間がラッキーアイテムの槍(本物)を装備して刃先で黄瀬の腹をちょんちょんとつつく。思ったよりも鋭利な刺激に飛び起きる黄瀬は慌てて黒子にしがみ付き緑間から距離をとる

ぎゃんぎゃんと警戒して吼える犬VS槍を装備した眼鏡対決がいま…はじまった!











黄「なんスかその槍!めちゃくちゃ痛いッスよ!?」

緑「赤司の鋏には負けるから大丈夫なのだよ」

黄「痛いのは痛いっス!ほらっモデルの腹から血が…でてないけど少し赤くなってるのは緑間っちの所為っスからね」

緑「大丈夫だ。今のお前はモデルの顔から遠く離れてる表情だから誰もお前をモデルとは思わないのだよ」

黄「だぁもー!天使が眼の前にいるから本能的に顔が緩むんスよ〜えへへ」

緑「(ゾワッ)そ、その締りの無い顔は俺の本能的に拒絶反応を生みだすのだよ!やめろ。刺すぞ」











狩猟民族の心になりきり槍を構える緑間の眼は獲物(黄瀬)を狙って離さない。まるで猛禽類の眼にも見え黄瀬は腕の中の黒子に離れる様に声を掛けるが返事が無いのに気付き下を見ると黒子がミスディレクションをして逃走したらしい











親鳥についていくように赤司の元へ戻り機嫌よさそうに会話をしてる姿に黄瀬の視線は奪われる










キランッ











緑間はその隙を見逃さず槍を構え黄瀬の脇腹狙いで振りかぶり投げた












黄「あっぶね…!」










悪運の強い黄瀬の回避により背後のロッカーに槍はけたたましい金属音を立て突き抜ける













がっしゃぁあん














全「……」





ロッカーは無残にも穴が開きとてもじゃないがドアの開閉ができる程の体力が残ってるようには見えない


ある1名を除き冷や汗がとまらない











黄「…あ、あの…あのロッカーって赤司っちの物っスよね」

緑「皆まで言うな!」

黒「ズコーズコー(赤司くん僕は関係ないので退室していいですか)」

赤「…」











顔を俯かせよく表情が読みとれない赤司はゆらりと体を揺らしながら緑間と黄瀬に近付きポケットから鋏を取り出しジャキンと音を立て顔をあげた


怒りから瞳孔を限界まで開かせ赤い瞳は氷よりも冷たく鋭利な鋏に似た鋭さを保ったまま笑みを浮かべてる










ぴっ


▶魔王モードON

魔王モードOF













黒子には上のコマンドが見えた気がした


2人の悲鳴が響く部屋からミスディレクションを活用し教室まで走り席についた途端にチャイムが鳴りあの3人は間に合わなかっただろうと心の中で合掌した


むしろ赤司のロッカーを破壊して五体満足でいられるように胃の中のバニラシェイクに祈りを捧げ教科書を開いた








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