黒子のバスケ

□オリオンのままに 8Q
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体験入部期間が終われば次は本入部。その本入部届けを出した人数は20人程度




その内で1軍に入れたのは5人。物の見事にカラフルな髪が集合したものだ






その5人は1軍メンバーと同じメニューを与えられ現在ストレッチをしている







赤司は紫原に背中を押され長座体前屈をしながら先程の件の事で内心苛立っていた


ピリピリと苛立つ雰囲気を本人は隠しているつもりの様だが周囲に撒き散らせ震えながらストレッチをしている1軍メンバーを赤司は知らない










(なにこの1年怖ぇええ!!!)








無意識に少しの恐怖心を1軍メンバーの心に植え付けた赤司に声をかける勇気を持つ輩はこの場所にこいつ以外存在しなかった











「赤ちん。何おこってんのー?」



勇者がいた

装備:空気を読まないスキル





「…怒ってない」

「嘘だー」

「…」







グッと赤司の背中を押し上半身を床へと近づければ苦しそうな声で「次覚悟しろ」とドスの聞いた声がしたので力を抜く


自分の背骨が折れない事を紫原は心で祈る











祈っても神様がいるかどうかも分からないので不機嫌な赤司自身に祈った方がいいと判断した紫原はダランと小柄な赤司の背に覆い被さる


潰れる様な呻き声が聴こえたが持ち前のスルー精神に乗っ取りマイペースに謝罪


周囲はどちらを助ければいいのかそれともスルーすればいいのか混乱中だった










「赤ちーん。俺の背骨おらないで?」

「ぅぐ、!俺がっおまえに!!」



















折られるわッ!!!









痛みをにじませた声とともに赤司に全体重をかける紫原へ殺意の籠る肘鉄砲を食らわせ転げ落とす


鳩尾にモロに入った紫原は静かに怒る赤司の背後で床と仲良くゴロゴロとイチャついているのを誰もが顔を逸らし「(早く交代のブザー鳴れ!)」と願う






巨体が背後で呻きながらごろごろと痛みを緩和させるために転がるのを徹底的に無視し長座体前屈から別の体勢にかえる赤司を誰もが魔王だと思ったのはココだけの話だ

















びー


無機質な音が響き交代のサインが紫原の背筋をぞくぞくと震えあがらせる









「あ、赤ちん……?」



床に蹲る紫原の前に立ち上から見下ろす赤司は天使顔負けの笑顔を浮かべ青褪める紫原を地獄へと誘う







「ホラ、次はお前の番だろ?」



背骨は折らないでおいてやる










小さな同情。しかし大きな希望にも感じられた










赤司の笑みでぽわんと花が舞う空気だったのが急激なブリザードに襲われ第一体育館の一部が凍りついたのは夢ではないのだ






















紫原は床にガンガンと音を立て額をぶつける位強めに背中を押されている。言わずもがな赤司に、だ








ガツっ

「……赤ちん」




涙目で赤司を顔だけで振り向けば押すのを止めてくれる親切設計な心を辛うじて持っていたらしい


無表情で「何?」と淡々と聞く



紫原はあえて空気を読まないスキルを持っているがここはあえて空気を読むことに専念する。自分の額はもう限界だと理解したからだ








それにこれ以上変な事をいって無事ですむのはアキラしかいないだろうとここ数日で把握済み

無意識だろうが赤司はアキラに甘い。逆にいえば赤司を不機嫌にさせるのもアキラが多いことをイコールで繋げてもいいのだ



実に歪な関係である








「…ごめんなさい(しょぼん)」




周囲には耳と尾が力無く垂れている姿に見えたらしい。変なフィルターが掛かっているようだ

犬フェチの心を揺さぶり悶える声が小さく聴こえた











紫原の珍しい謝罪に赤司は分かる人には分かる程度に表情を緩ませ紫原もそれを見てパアァと嬉しそうに顔を緩ませる






端からみれば無表情の奴にいきなり笑顔になったトトロである

猫バスも逃げていく訳だ











「次は俺との体格差を考えろよ?」

「うん」

「…で。案外勘がいいお前は俺が何故怒ってるかわかってるんだろう?」

「………さっきのテスト?」




先程のテスト
これ即ち新入部員を各軍に振り分けるテストの事である

大抵の奴は3軍に振り分けられカラフルな髪の5人は1軍に振り分けられた訳だ

勿論バスケの能力で公平に各自配属されたのだが…あの問題児がまたやらかしたのだった







先程のテストの光景を思い出し赤司は無意識に苛立ちを両手に込め紫原の背に思いっきり圧力をかけた








ばきっ

「あ”」




何かが折れた音が紫原からきこえた
恐る恐る青褪めた顔色をしたトトロがやけに笑顔な魔王へ振り返り魔王が一言














にっこり

「俺が人の骨折る訳ないだろう?」
















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