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□thirty-third
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 もう間もなくハロウィーンも近いとある肌寒い日のこと。

午後の授業後にマグゴナガル先生に捕まった悪戯仕掛け人達は、日頃の罰則回数が新年度になり二十回を越えた事により特別に校長自らお説教頂く羽目になってしまった。

ピンと伸びた背が怒りながらも四人の前から遠ざかっていくとシリウスが面倒臭そうに肩を回してぶうたれる。それを皮切りに賛同の声は重なっていく。

「たっく……俺達最近はハロウィーンの準備で忙しいから悪戯なんてしてねえのに」

「ホントね。折角盛大にハロウィーンをレギュラス達に楽しんで貰おうと計画してたのに……気分が台無しだよ」

「リーマスまで先生方にそこまで言うなんて珍しいね?」

 ピーターの茶化した声にリーマスは眉を吊り上げ不服そうに言い返す。ヒッと縮こまった鼠のような声がピーターから漏れてシリウスとジェームズはケラケラ笑った。

「だってあの二人が一ヵ月以上も個人行動してるなんておかしいじゃないか。喧嘩では無いって言うし、僕等が出来ることって悪戯で気分が良くなるようにしてあげることくらいだろッ」

 リーマスの怒りは数秒後に我に返った時にみるみる内にしょぼくれて消えてしまう。完全に怒りが消えたリーマスは罰が悪そうに謝り、手の甲をそっと口に当て深呼吸をする。

ジェームズは語尾を震わせながらもリーマスの意見に同意を返しながらも頷く。この所のレギュラスとメリッサの様子は近くにいた四人の心配の種でしか無かったのだ。

「まあ……新学期早々に別行動をする二人を見たら心配しない方がおかしいよ」

「心配し過ぎて我が家のレギュラスに凄い顔で問い詰めた奴の言葉は説得力があるな、え?」

「……シリウス。まだ根に持っていたのかい?」

 ツンとそっぽを向いたシリウスは下手くそな口笛を吹く。音程を知らない耳障りな口笛を聞き流しながらジェームズは腕組みをして、釈明へと打って出る。

「そりゃあお宅のレギュラス君を責めて悲しそうな顔させちゃったのは悪いと思うけど、彼しか事情を知らないから仕方ないじゃないか。メリッサは絶対口割ろうとしないし」

「それでも……俺はレギュラスのあんな顔見たくなかった。あんな言葉も正直聞きたくなかった」


 ふざけるのを止めたシリウスは拗ねた口調で言う。その顔はジェームズ達は初めて見た物では無く幾度も見たことがある。レギュラスを責めた時以来よく見受けられる事になったものだ。

あの時レギュラスは傷付いた表情のまま視線を落とし、ただ一言だけジェームズ達に言った。その言葉はジェームズだけでは無くその場にいた他の三人の耳にもこびり付いていることだろう。

溜息混じりにジェームズが零した声が秋の終わりと冬の始まりの冷たい空気に溶けて静かに消えていった。

「ーー二人には必要な時間だから、これでいいんです……か。あんな顔してよくも大人びた台詞を言えるものだよ」





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