番外編

□魔性の男
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「ふァ、ああっぅ、アキラ、ーーっんぁあッ」

 惜し気も無く響く耳が蕩け落ちてしまうほどに甘い声。律動が早まれば早まる程、嬌声は余裕が削ぎ落されて、アキラの腕の中にいる子は本能の塊に成り果てる。

いや違う。アキラ共々二人して快楽を貪り尽しているのだ。ただ腰を揺らす流れ作業なんて簡素な言葉では収まり切らない心身が満たされる悦楽は、何度食べても飽きが来ない。

それどころか赤司が「嫌々」と駄々をこねる子供のように頭を振ったことを視界に入れたくせに、止まるなんて選択肢にも入れようとも思えないのだ。

止められないほどに赤司に理性を溶かされてしまった。ならば、もうーー堕ちるだけだ。


「ひっンン、んっあ、あッまぁ、てまって……ッや、や……ッいっちゃ、ぅぅ……!」

「イけ、セイジュ。全部見ててやるから」

「うあっあ、ば、か……っばか、ぁっあア、ーーッ」

 ばか。尖りも見えない甘い泣きごとを零しながら赤司は全身を震わせ、息を詰めながら白濁を数度に分けてアキラの腹にかけた。

中途半端に脱いでいた為に制服に白濁がつくことはなかったが、ついたらそれはそれで理性を取り戻した赤司の反応が面白い。

少しだけ残念だと笑って、ぼんやりと射精中のまどろみに浸る可愛い子を容赦なく快楽の海へと沈める。敏感な胎内を広げるアキラ自身にギョッと驚く赤司が、またボロボロと泣きながら喘ぎ始めれば絶景がアキラを待っているのだ。

「や、やっなん、で……っまだ、ァアっあ、イッて、る、のに……ぃ」

「だからだよ。セイジュが気持ちいい瞬間に酷くされるのが一番気持ちいいって、俺知ってるぜ」

「ちがッアンんッあっーーんっく、ぅうッんあア、ひっ」

 ビクビクと震えるのに強く締め付けて離さない胎内を全力で暴く。彼が弱いしこりも、奥も。膨張し切ったアキラが全て埋まった胎内で腰を回せば、子猫の鳴き声が唾液に濡れた赤い唇から紡がれる。

全身で快楽を感じる赤司が零す全ての言葉が隠し切れずに空き教室内に木霊する。もし他学級が授業中だというのに、しけこんだとしても絶対にバレるほどの素晴らしい嬌声だ。

肌を打ちつける乾いた音など僅かなスパイスに思えるくらいに。アキラには赤司の感じきった声が、なによりも性欲をそそる感覚に背筋が震えた。


 限界が見え始めて更に加速は増していけば、赤司が感じきった紅潮した顔のまま、また乞うてきた。

「はぅっあ、アアっアキラ、ねが、おねがい、やだ、まだ……っ」 

「ああ?」

「まだっンン、やめ、たくな……い。もっと、してっひ、ぁあアアッ」

 ぐじゅんとうねる胎内までも乞うてくる。まだいてくれと。まだしてくれと。

理性が掻き消えた赤司の瞳からはいまだ大粒の涙が絶えず零れて紅潮し切った頬を滑り落ちていく。卑猥にも願う口端からは透明な唾液の線が顎を伝いっ放しで舐め取っても切りが無い。

ここまで追い詰めた身で思う事はやはり「絶景だ」という一言に尽きる。それにまだ終わりたくないだなんてアキラも同じ気持ちだ。

赤司の唾液を舐め上げて、唇を重ねる。すぐに離れて唇が喋るだけで触れ合う距離で、卑しくも訊ねてみる。

「いつか先生が来ちまうかもな、それでも?」

「んっん、いい。いいか、ら……ぁあんっ」

「へえ大胆。んじゃあセイジュが満足するまで、な?」

 こくこく。必死に頷く赤司を機嫌よく見下ろしたアキラは喰い尽すように唇を重ねた。律動の合間に脳内に響く腰に来る嬌声がいつまでも響く。

そんな中でも小指の爪先ばかりの理性が「テッちゃんに手回しして貰おう」と万が一の場合の対策を考えてしまっていた。だがそんな余裕さえも、赤司の方から差し込まれた熱い舌が触れてきたことで弾け飛んでしまう。

キスを深める為に顔を傾け角度をつけたアキラの藍髪へまた手が差し込まれ、赤司によって引き寄せられる。歯ががつ、とあたる音がしたが絡める舌の心地よさにどうでもよくなる。

赤司と触れ合う部分から理性が溶かされていく。それはまるでーー魔性の男の力によるものじゃないかと馬鹿馬鹿しくも思えた。





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