番外編
□猛烈ホームシック症候群 2
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「たでーまあ」
「ただいま京都より戻りました!」
朝練も終わりかけの社長出勤で問題児二人が戻ってきた。途端にざわめくが今吉を中心にぞろぞろと練習を中断してまでも来てくれた
どうやら尋常じゃないエースと敏腕マネの行動をきにかけていた様で、先日とは明らかに表情が違う二人に安心と共に洛山で何があったのかと疑問に思う面々だがそんなこと後回しだ
先輩達の壁をくぐり抜け青峰の前まで躍り出た桜井は、彼の顔を見て一瞬ビクッと体を震わせそのまま勢いで土下座をし男らしい誠意を見せた
事情を知ってた面々は頭を下げて謝るくらいにしか考えなかったが…今にも「介錯を!」といわんばかりの潔さにピシリと固まる
「本当に、スイマセンでしたッもう本当にこれ以上なにしたら良いか分からないんですけど、本当にごめんなさい!」
「いや…いいって良。土下座とか…ホントいいから、頭あげろって」
「いいえ!ボクは青峰サンにそんな優しい言葉をかけられる立場ではないんです…っ誰か、誰か介錯を!介錯をお願いしてもいいですか若松サン」
「俺かよッ…とりあえず桜井立て。先輩命令」
「………はい」
抗えぬ上下関係に渋々…本当に渋々答えた桜井。若松のこめかみに青筋が浮き出たが青峰の気を遣う言葉にスッと消えていく
「良ホントに気にすんなって。俺お前に言われなかったら多分もっと酷いことになってた」
「アレ以上ですか…」
「泣きながら連中の名前叫んで床中をローリングしてそのまま通報されるくらいは余裕でやってた。だから良は謝る様な事してねーよ」
例え話が妙にリアリティがあり実際にされたら余裕で停学を喰らうだろう
既に水に流され地雷を踏んだ話の最中に浮かべた嫉妬が絡む歪な笑みでは無く、苦笑いがちょっと混ざるふわりとした笑みを浮かべた桜井は青峰の言葉を受け入れることにした
それを見て満足気に口元を上げた青峰は彼の肩を軽く叩き通り抜け、後輩同士の仲直りをニマニマした顔で見守ってた今吉に素っ気無く封筒を突きつける
「手紙か?」と茶化したが中身を見て、声なき声をあげ糸目で定評がある眼をこれでもかと開き青峰へ詰め寄る。必死な声と形相に青峰が引いてようがそれどころではない
「おま、お前…っ強盗してきたんか!?謝罪の為の金を他所様から奪ったんか…っそれだけはアカンわ、あ、謝りに行かんと…!」
「はあ?それ赤司に今吉サンか監督に渡せって言われたモンだぜ。金額はなんだっけなー、さつきー幾ら入ってるって言ってた?」
「さあ…赤司くんは桐皇への迷惑料とユニフォームとジャージ代は余裕で賄える筈だが足りなかったら言ってくれとしか…あ、足りませんでした?」
「アホか!!ゼロが一個多いわ!」
全力でツッコミを入れる今吉の手の中には彼曰くゼロが一個多い諭吉様がいらっしゃる。一介の高校生がぽんと手渡せる値段では無い
糸目を目が乾く程に限界まで開き「赤司何モンや」を小声で呟く今吉の肩を慰めで叩き、冷静を保ったままの諏佐が今吉が聞き流した話題へ触れる
「ユニとジャージを買い換えなきゃいけなくなるようなことでもあったのか」
すると意味有り気に青峰と桃井の視線は合いにんまりと笑いが零れる。桃井の方から「むふふ」と可憐な女の子にあるまじき声まで上がってしまう
諏佐はこれは聞いてはいけない話題だったと気付くがもう遅い
「深くは言えねえが、黒はよく映えるってことだな」
「ふふふ…際立ってたね。多分これから頻繁に会う約束してくれたから今回みたいな事にはならないだろうけど、それでもあと数回は生で見たい!でも怖い、はまりそう」
「俺は怖くねえ。新しい世界への扉なんざ中学ん時に開いたっつーの。帝光に通っててまた清純ぶるとか時代遅れだぞさつき」
「ぶってないよ!」
「ぶってたから本音が漏れてたんだろ。普通の女は生で見たいとか言わねーんだよ!」
「ハッ…しまった…」
何かの勝負でもしてたのか桃井が頭を抱え膝を折る
もうちょっとで四つん這いになるというのに惜しいポーズだが胸の谷間が僅かに見えラッキースケベがここに数人発生した
バレない様に鼻を抑え我先にコートへ戻っていったのはラッキースケベの証拠と同時に童貞の証拠をダブルで晒していた
青峰はポケットから携帯を取り出しアキラ達の新居にて散々撮った写真の一番最新の物を見てにやける口元を携帯で隠す
(アイツ等と会えて喋るだけで大分マシになるって…そうとう依存してんだな。じゃなきゃこんな写真撮りまくんねえか)
画面がブラックアウトするまで画面上に映っていたのは
桃井のジャージを借り男女の差が全く無かった事にショックを受けている赤司と桐皇ユニフォームを着こむアキラが赤司の姿を見て赤面してる姿だった
惚れ直してるシーンを撮られてるとは知らない画面の中の二人は、桐皇の二人が戻ってくるのに合わせて東京へ一時帰宅をしている
彼等の前ではとても晒せなかったユニプレイへと手を出している最中だが、黒に白は映えるを実際あらぬ白を纏わせた赤司の写真が一枚だけ数時間後に送られてくるとは知らず
写真の現像の為にコンビニへと二人で我先にと駆け込むのであった
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