番外編

□猛烈ホームシック症候群 1
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ずび。ずっずっ。鼻を啜る音がする

鼻先と眼尻を赤くした赤司は神の使いでは無く、悪魔の使いとも云えるアキラにしっかり抱きかかえられながら紫原とアキラの会話を聞き流していた

赤司曰く酷い顔(泣き顔)はとても見せられるものでは無いとのことで彼氏様の肩口に隠し、抱き付く事を忘れ無い


「そっかあ。そっちの先輩達も変な人なのか」

「すっごい変だよー?でも割とお菓子とか譲ってくれたりプレゼントしてくれるからすき」

「ちゃんとむっくんが馴染んでくれて嬉しいよ。な、セイジュ」

くぐもった鼻声が「ん」とだけ返す。恐らく同意したのだろう

一切顔を見せようとしない赤司に紫原とアキラが顔を見合わせクツリと笑う。笑った表情が崩れる事のないまま紫原はゆっくりと彼の思いを話してくる

明確な意思と瞳の前に黒く湿った雲はかかっていない。きっと紫原は笑って帰ることが出来る。アキラはなんとなくそう思う


「俺ね…秋田いる時すっごく寂しかった。だって皆いねーし簡単に会える距離じゃねーし、我儘言って困らせるのも何だか…嫌だったし」

「でもね我慢して我慢してしょうがないって言葉で誤魔化すの疲れた。皆の髪の色の飴見るだけで泣けるとか、大分やばかった。だからもうさー」

「次からは泣いちゃう前に会いに来る。もしくは皆を呼ぶ計画を赤ちんと立ててアキラちんに実行して貰う」

そうすれば寂しいって苦しくなる程泣かずに済むよねー?


紫原が脱ホームシックを乗り越える打開策を満面の笑みで訴える

彼が思う策はこれからの高校生活の四分の一程度は皆と会う頻度になるとは本人おろかアキラ達さえ知らず、ふにゃふにゃと妖精が笑う姿に癒されていた


うんうんとアキラが頷き「だよねー?」と呑気な返事が返ってくる中、鼻声がまだ残ってる赤司がロウからの伝言を忘れずに伝えておく

しかし顔はしっかり肩口に埋められたままだったことだけが残念だった


「ず…紫原、ロウが…次はちゃんと日時を指定してから来いって言ってるよ」

「えー?ロウちんってサプライズ系に弱いからそういうこというんでしょ。俺の襲来はいつでも突発的なのが売りだよー」

「紫原がアキラみたいに変なこと言ってる!」

「え…え…?セイジュさん…さり気なく酷い事言ってる」

「うるさい。俺はまだゆるしてない。喧嘩中は、はなしかけるな」

「……むっくん。この子のこういう所どう思う?」

「可愛いと思うよー」


赤司を褒めた紫原は帰り際半年分のお菓子をお土産を送って貰う約束を取り付け、ホクホクとしたお菓子事情に頬を緩ませたまま帰宅し、心配して見にきた先輩方を大層困惑させた


(たった数時間でアイツなんであんな笑顔なんだ…!?)

(ホームシックって簡単に治るものアル?)

(そんな訳なかろう…なぜじゃ…なぜ紫原が笑ってるだけで花が舞ってるように見えるんじゃ…)

(オリオン…流石だよ)



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