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□オリオンのままに 34Q
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迷子の子供が親を探せずに泣き出すのは不安で仕方ないからだと聞いた事がある
声を張り上げれば親が自分を見つけてくれるとどこかで思っているのかもしれない。ところが大人に近付く内にその行動を取る者はまずいない
多感な年頃である中学生なら尚更。ともなればアキラがする事も限られてくる訳で
歩きが早歩きへ、駆け足へ走る走る
泣く代わりにバスケで鍛えた足を必死に動かしお目当ての人物を追い求めていた
すれ違う生徒がいない夜の学校を走るのは中々に楽しい。だがほんの少しだけ気味が悪い
久しぶりにきいたワードが恐怖を煽る形で後押しし走る速度が自然と早まる
幾度目かの階段を降り廊下を走る。最早校内の赤司がいそうな場所は調べ尽したというのに見つからない
「図書館、保健室、教室、あ…あそこがあったか」
パッと思い付いた場所は現在地より近い。ブラックリスト入りしてようと有能な赤司を逃がさずゲットした奴等の…生徒会室にきっと
キュキュっ
通り過ぎそうになるのをスキール音を立て勢いよく止まる。生徒会室は静まり返り闇夜に溶け込む様に光ひとつ無い
「…いねえのか?」
悪い癖がついた、と赤司なら頭を抱えるだろうが止められない止まらない。引き戸に手をかけ無断で開けると開錠されていたらしくすんなり開き拍子抜けだ
暗い室内をキョロキョロと視線を配ると、特大サイズの円卓の一席に蹲る小さめの影が物音にも気付かず眠り続けていた
遠目からでも分かる人影に無意識に口元が吊り上がる。音を立てずに忍び込みそっと施錠
「…すぅ、んんー…」
御目当ての人物こと赤司に近付き背後から覆い被さる
両手を頭の横につき体重がかからないようにしながら覗き込めば下敷きになってる書類が何部か残っていた
赤司の性格上こういった仕事は早めに片を付けるのが当たり前だというのに、実に珍しい光景だとしみじみと思ってしまう
キセキの世代を纏めるリーダー役に生徒会役員、家事全般に…恋人としてのスキンシップなどなど
考えれば考える程赤司が休む暇など無いことにアキラは苦笑する
「働き過ぎだ…たっく」
眉を僅かによせて眠る顔に頬を緩ませ瞼にキスをした。ピクリと動いたが夢を見続けてる。余程疲れているらしい
数分、宝石を魅入るようにじぃっと愛らしい寝顔を見下ろしフッと笑みを浮かべる
相談したいことがあった。顔をみたいと思った。だけど疲れてるこの子を起こしてまで聞いて欲しいとは思わない
精神的にふらついたのに顔を見るだけでいつもの自分に戻れたのだ
相当毒されてる。だがそれはこの子だって同じだろう
「俺はお前を頼ってここまで探しに来たんだ。お前も俺を頼れよ」
セイジュの肩の荷を一緒に背負うくらい、なんてことねーからな
口説かれてる本人が起きていたならば、顔を真っ赤に染め羞恥心に震えながらも、笑って頷くだろう
残念ながらそれは見えそうにない
「ま、勝手に担がせて貰うぜ」
腰に巻いてた帝光のロゴ入りジャージを赤司に被せ未消化の書類を取り、隣の座席につく
出しっ放しの筆箱から赤司愛用のシャーペンを借り書類に目を通し始めた
適当にとった書類をパラパラと捲っていると見覚えのある名前と内容に手を止め、見入る
「……なんでセイジュがこれを持ってるんだ」