黒子のバスケ

□オリオンのままに 3 2 Q
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「もしかしてアキラちん達同じ物いれたー?」

こてん。首を傾げ疑問を投げ掛ける大きな子供に2人で顔を見合せへら、と笑う

「そうだよ。ちょっと事情があって同じ物にしたの」

「大人の事情がね…」


大人の事情と説明されれば思春期真っ只中の中学生があらぬ想像を各々でしてしまう

腐男子の黒子が目を輝かせ携帯の録画モードを起動させるのも当然なのだ

「買いすぎて余った苺牛乳を少しね 」

照れながら言う赤司は最高に可愛い。皆見慣れてるとはいえ反射的に赤司を撮影…きょとんと不思議そうにする姿がフレーム越しに映る

「え?え、」

「灰崎。彼氏と苺牛乳風呂入ってみなよ…中々燃えるよ」

困惑する赤司の項にさりげなくキスをしつつ灰崎へ助言。急に声のトーンを下げたアキラにときめく赤司と彼氏と実行した場合の妄想で赤面する灰崎


…受け組は赤面が色っぽくて困る


突然録画中の黒子がカッと見開き腐男子の血を荒ぶらせる

「その動画は!?」

「テッちゃん用に編集したSDカードはオレ…ボクの寝室のデスクに…って速」

ばたん!だだだだだだだ

脱兎の如く駆け抜け部屋を出ていく腐大臣。今日も本が厚くなりそうだ


「ねーこの鍋皆でたべよー」


どこから取り出したのか丼に中身を入れ美味しそうに頬に溜める紫原に青褪めた青峰と緑間

全力で鍋を拒否してるのをシカトして口に押し込める姿はまさに悪魔。被害者が絶望した表情で気絶するのも構わないようだ

次のターゲットは灰崎へ向くと思ったが彼は未だ赤面して凍りついたままだったので見逃したらしい

何故か彼氏持ちには優しい悪魔に苦笑を浮かべる


「コイツら今日起きると思う?征ちゃん」

「無理だな」

「このまま寝かすか。むしろ雑魚寝してみる?ボクらも」

「…いいね。皆でお泊まりってやつだろ?ふふ」

「そうと決まればむっくんの暴走止めてよ」

「仕方ないなぁ」


お泊まりと聞いてぱぁぁぁっと表情を輝かせるまであと…





**********




俺にはもうひとりの俺がいる

たまに脳内で会話するが主に夢の中で対面する


そう今みたいに


俺とよく似てる彼の名前は無い。彼は一人称が「ボク」なのでボクと呼んでる

あれ。ボクが俺の中に現れたのって…いつからだっけ

「考えごとかい?俺」

朱金のオッドアイを柔らかく細めて微笑むボクに俺まで嬉しくなる

アキラを想うのとはまた違う気持ち。俺にはまだその名前は分からない

きっとボクに聞けば教えてくれる。ボクはいつも俺の為にって色々考えてるみたいだし

…ちょっと過保護かも?


「俺?」

「あ、ううん。なに?」

「そんなに楽しかったんだ。お泊まり」

俺を通してボクは同じものが見えるんだって。記憶とかも共有できて不思議な存在

感情だけは別々なんだけど問題はない。なんでも話せる相手だもの


「楽しかったよ。皆で泊まるの久しぶりだったし。いつもはアキラとだから」

「またアキラ?よく飽きないね」


あ、まただ。ボクはアキラの話になると雰囲気がピリピリする

ボクは俺には怒ったことなんて無い。だから、笑ってるのに冷たい眼が怖い…なんでそんな眼をするんだろう

俺と同じでアキラが好きと言うわけではないのかな…


俺がふるりと恐怖で震えれば雰囲気はガラリと変わり普段通りに変わる

心底安心できる優しい声と笑顔。そっと抱き寄せてくれるボクに気のせいだと思い込むように瞼を閉じボクの肩に額をあてる


だって


「ああ。すまない…怖かったかい?俺」


こんなにも


「俺に怒った訳では無いんだ。誤解させてすまない」


優しいボクが


「ただね覚えておいてほしいんだ」


全てを掻き乱し


「俺を傷付けるもの全てのものから守ってあげる。だからその為に」


壊すなんて


「ーーボクに逆らう者は親でも殺す」


信じたくなかったんだよ、アキラ


「例え…俺が好きなアキラであっても、ね」


俺は見なかった。ボクが憎悪に沈み殺意さえも滲ませる眼をしていたことを、見ないふりをして恐怖で震える体を必死に押さえつけた



それは確かな嵐の予兆だった



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