黒子のバスケ

□オリオンのままに 3 2 Q
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ぱちん。部屋の明かりが消えぐつぐつ煮立つ鍋の熱気が緑間のメガネを曇らせる

真っ暗闇の為誰一人緑間の異変に気付かないのが非常に残念でしかたない



主催者アキラがご機嫌なまま指示


「じゃ皆持ち込んだもの鍋にいれて」


いっせーのせーで


気の抜ける掛け声と共にざぱーっと鍋に投入される。瞬間なぜかとてつもなく甘ったるい香りが鼻を刺激


アキラが首を傾げる


「(闇鍋ってこんなフルーティな香りするの?なんかがっかりだな)」


文字通り地獄絵図のような光景を期待していた為若干テンションが落ちてしまう…それを見逃さない人が1人



「アキラ?」

「ん?」

「どうしたの、っ」



心配した声色が問いかけた言葉を一瞬で奪い柔い唇を割り無防備な舌を弱く吸う。すぐに開放すれば何故か赤司が動揺していた

言葉を紡げば唇が触れ合うその距離でみつめあう



「、あ、の。ちょっと、なにして」

「口に出す必要がある?」

「…ない。ないけど…不意打ちすぎる」

「セイジュのキス1つでオレの機嫌治るなら安いものじゃねーの」

「む。ボクの機嫌が悪くなってもいいの?」

「それは困る、ン」



かぷり。アキラの言葉を奪い綺麗に笑って見せる。リップ音が小さく鳴りゆっくり離れていく



「……暗闇だからってキスして痴話喧嘩とかほんとやめてくんない。灰崎くんからのお願い」



可愛い不意打ちに頬を緩ませ後を追おうと小さく笑う赤司を引き寄せた途端に横槍

否。呆れた声色の灰崎からの突然の妨害である

アキラの膝に残念そうに溜息をつきながら赤司が乗り上げ背中を預ける。キスを阻止されたことがショックだったらしい


「大丈夫。喧嘩なんてしてないから」

「そうだよ灰崎…俺がお前にちょっと怒ってる以外には何も異常なしだから」

「うるせー!いいから早く始めるぞっ」



ぷんすか怒る赤司が地味に灰崎を足で蹴ってるらしく「痛ぇっ」と何度か聞こえた

拗ねた赤司が進行できる訳がないと踏み緑間が代打に努める



「出席番号が早い順に…」

「嫌だよ。誰か先に毒見してから食べたい」

「藍澤…我儘いうんじゃない」



なら仕方ないねー、などとやけに甘い声が聞こえる。こうやってアキラは赤司に甘やかされていくのである

緑間が呆れながらも別の案を出す



「なら背の小さい順で…」

「喧嘩売ってるんですか。買いますよ緑間くん」


1番小さい黒子が反抗。嫌なら別の誰かがこいつ等纏めてみせるのだよ!お母さんもう疲れた!



「てかさー俺食っていい?」



発言と同時に誰かが鍋をつつく音。咀嚼音が聞こえ唯一の聞き分けの良い子が実行したらしい


「……うん。はい、次峰ちん」

「おう」


やけに無言が長い。味の良し悪しも聞けぬまま次へ次へと皆同じ反応で食べていく

紫青黒緑灰と無言のまま回り次はアキラの番だが…ノーリアクションの面々は何故かニヤニヤと悪どい笑みでボンボン組を見ている

非常に気持ち悪い…が言い出しっぺが尻込みする訳にもいかず



「ねぇ。なんなの皆して」

「いいから食ってみろよ。これが庶民の闇鍋だから」

「言い出しっぺがやっぱ止めるなんていわねーよな」



主に青と灰が煽ってくる。相手にするのも面倒臭いが若干頭にくるのは気のせいでない



「食べるって。ボクが止める訳ないでしょ」


箸でかき回せば甘ったるい香り。甘い物は嫌いではないアキラでさえ躊躇してしまうが男が言った手前引けるわけもなく恐る恐る口に運ぶ


途端。想像を遥かに超える甘ったるい味が鼻から口から伝わり思わず身震い。不味いわけではないが舌にねっとりと残る極度の甘さと柔らかい何かの存在…


「って、シリアル?」


確か違うクラスのモデルがCMしてたあの牛乳かけて食べるアレによく似てる感触…



は?闇鍋でシリアル入れる馬鹿いるの?



突然緑間が美声を張り上げる


「その通りだ!」

「うっさいんだけど。なにそのテンション」


ぐーるぐーる箸でかき回せば甘い香りが部屋を更に満たす。うぇ、と誰かがえずく。吐いたら殺すぞ



「青峰くん。リバースしたら殺されますよ。赤司くんに」

「うぷ」

「大丈夫。畳代を青峰の親に請求するぐらいで許してあげる」

「峰ちんの家破産しちゃうー?アキラちん」

「うーん。1枚20万くらいな筈だから部屋全体は15畳分の代金で済むよ!」


20万×15…



「緑間ァ!ダイキを便所につれてけっ」

「ダイキって呼び捨てにすんな!」

「緑間ァ!よし鍋にこのくそ野郎の顔を突っ込め」

「くそ野郎は俺以外全員と思っていいか」



お前が1番くそ野郎だよ!



全員の声が揃う

黒子より真っ黒な緑間に精神的ダメージを負いながらアキラが闇鍋を取ろうと動く赤司を動けなくなる程強く抱きしめすりよる


「ちょっと、いたいよ」

「セイジュ。こんな不味いの食べんな」

「闇鍋が美味しいわけないと知ってて参加したんだよ?」

「うっせー、いーから食うな」

「…ふぅ分かったから、ね?」


ね、と優しく力を緩めることを求められ応じれば鼻先にキスが振ってきた。いいこ。そういわれた気がした


ずずず…と誰かが汁を啜る音。紫原の不満そうな声がすぐにきこえた

「てかさー本当にコーンフレークしか入ってないし、何故か牛乳入ってるしコレ皆何持ってきたわけ」


すぐに返答したのは黒子


「僕は只のシリアルのバニラ味を」


吐き気を我慢しながら答えた青峰


「シリアル、っう、紫蘇味…」


携帯で彼氏との写真を見返しうっとりした灰崎が続く


「コーンフレークの練乳味…はぁ。会いてぇ」


フラッシュをつけ闇鍋の中身を撮影しブログに上げながら緑間が答える


「フレークの…テラワロスっと、味だ」

「テラワロス味って何ですか」

「何故俺がいま書いたばかりの言葉がわかるのだよ真っ黒子」

「眼鏡かち割りますよ。どうせ緑間くんはお汁粉味か何かでしょう」


ぞんざいな扱いだがまさかの的中に緑間がびっくりしブログの削除ボタンを押してしまう

絶望がすぐにやってくるのだろう


「俺はコーンフレークのエビフライ味いれたー」

「わかった。俺の吐き気の原因はお前のエビフライ味の所為だ…!」

「峰ちん言い掛かりなんて男気ないねー」

「ファック!!!」


青峰が紫原への怒りが治まらないのか奇声を発しながら喚く

煩いです、の一言で畳に伏せてしまう。実にナイーブ峰過ぎる



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