番外編

□If my wishes can be true
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そんなキセキの世代らしいカオス具合を1人赤司が介入せず見つめる



何も変わっていないという安心感と共に自分が1番会いたい人がいない不安感が一気に押し寄せてくる

声だけじゃ足りない。きっとアキラに抱き締められるだけで泣いてしまうのだろうけど…会いたくて仕方ない


想えば想う程アキラを求めてしまう赤司はもう手遅れなのだと自分でも呆れて笑ってしまう





__いま、名を呼べば来てくれるかな










「__アキラ」

「__なんだ、セイジュ」








背後から優しく赤司の体を包む長い腕

大好きな香りと声に自然と眼の奥が熱くなって、嬉しくて堪らない

ふにゃり。緩む表情を隠しもせず晒し長い腕に白い手を添える









「ボク、魔法使いかも…だって名前呼んだらホントにアキラ来るんだもん」







馬鹿馬鹿しいことを口走ってる。自覚はあるけれど止めようなんて思わない

本気でびっくりしたんだよアキラ


伝う涙が止まらなくなって困ればアキラの大きな手が慣れた手付きで涙を奪う。ちょっと力が強めなのは久しぶりのせいなのかな








「誰かさんが寂しそうにオレの名前呼ぶのが聞こえたんだよ」

つい体が動いちまったんだ






くるりと体を向き合わされアキラが屈み額同士をこつんと当てる

長い前髪同士が混じり藍とオッドアイが甘く混じる…かと思いきや






「それに一応言っておくがお前が魔法使いとか絶対あり得ねぇ」

「…わかってるよ!ばかぁ!」

「うっせ!たっく…っしょ、と」

「んあぁあ!?」







急に視界が高くなり赤司を抱き上げた犯人にしがみ付けば茶化す様に言われる







「人前で喘ぐな。オレ限定のモンだって事忘れんなよ」

「だって、」

「はいはい。ビックリしたんですよねー」

「む。バカにしてるでしょ」

「してる」

「〜〜ばかぁ!」







ばかばかばかぁ


不満気に文句言ってくるセイジュを抱っこしたまま階段を下りる

罵倒の言葉が尽きたらスリスリとアキラの肩に擦り寄り嬉しそうに微笑むものだからちょっかい出さずにはいられない

仕舞いには落ちない様に、というよりは離れたくないと主張するように赤司の足が腰へ絡みつく






そんな姿が可愛いくて仕方ないとアキラが1度足を止めセイジュの唇を奪えばきょとんとした後ボッと赤面

もっとかと聞けば恥かしそうに上目使いをして後で、と返され聞いたこっちが恥かしくなる

目尻に残っていた最後の涙を舌でなぞり奪うことで表情を読み取られない様に誤魔化した









「あれぇー?アキラちんじゃん」


肩に黒子を担いでる紫原がひらひらと手を振って出迎える


「赤司っち彼氏来てよかったスねー!相変わらずベッタリな様で何よりっスよ」


鼻血を一筋垂らしながら満面の笑みを浮かべ喜んでいる黄瀬の現状を気にせず赤司がふわりと笑みを返す




「うん。ありがとう涼太」

「涼太、ねぇ」

「?」




不満そうなアキラの顔。未だ仲間の名前呼びに軽い嫉妬を抱いているらしくそれに気付いた青峰が悪どい顔を浮かべる






「赤司。俺の名前知ってるよな?」

「…大輝だろ?改名でもしたのか?」

「青峰っちは最近大吉って改名したらしいっスよ幸運な顔付きになるようにって」

「してねーよ!」




パコンと黄瀬の頭をフルスイング

痛みに嘆く黄瀬を放置し踊り場にうつ伏せでうつ期突入中の緑間を見て赤司がアキラのポケットを叩きある物を探す

お目当てのモノを発見したらしく寸分の狂いなく緑間の顔のすぐ近くに鋭利な鋏が突き刺さる






アキラの悲痛な声で緑間が鋏の存在に気が付き眼を見開く


「オレのラッキーアイテム!」

「かに座のラッキーアイテム…鋏じゃないか…これは、一体…」


ラッキーアイテムは緑間は既に手配済みな為若干動揺しているらしい



動揺を打ち消す赤司の一言に緑間のうつ期は脱出の糸口を掴む





「ラッキーアイテムが2つもあればきっと黒歴史だって乗り越えられるよ」






黒歴史黒歴史黒歴s…

悪魔の3文字が泡沫と化し穏やかな笑みを緑間は浮かべ納得したようだ

後光が差し始めた緑間は立ち上がり皆の元へ歩み寄る






中学の時となにも変わらない各々の態度…より顕著な2人へメンバーの例の言葉を投げつける








「それにしても」

「相変わらず」

「いちゃいちゃしてるんだな」

「2人がいちゃつかないと何か俺等も元気でないからいいじゃないっスか」

「ぱしゃぱしゃぱしゃ(2人は視線が合うとキスする位で丁度いいんですよ)」





赤司がにっこりと微笑む




「敦。テツヤのスマホ没収」

「あいよ〜」

「だああああああ!腐大臣の装備が!」





黒子との恋愛フラグが折れない青峰と黄瀬は黒子の平常心が消える瞬間を目の当たりにしてそっと荒ぶりそうになる理性を抑える





「(耐えろ耐えろ。しょぼんとした顔が可愛いなんて絶対口にだすな思うだけにしとけ俺)」

「かわいー黒子っちぃ」




ギンッと黒子に睨みつけられるが気にしない図太さは見習いたいものだ

緑間はずれた眼鏡のブリッジを戻しもう1度言う







「本当に相変わらずだな…全員」

「「「「お前がいうな」」」」













******








「それで赤司くん。僕等を呼んだ理由ってなんですか」

「おーそういえばそうだったっけか」

「アレじゃないっスか大会がんばりましょー!っていう…」



「はぁ?赤ちんがそんな頭足りなそーなこと言う訳ないじゃん。黄瀬ちんホントバカ」

「バカは青峰っちだけっス!俺はアホの子!」

「大差ないのだよ…って藍澤、赤司。話をきけ」






階段の段差に座り皆がいる踊り場の少し上の場所にて久しぶりに会えた喜びをキスやら髪を撫でるなどで表現してた2人を甘い世界から引き摺り落とす


仕方ないなと残念そうに赤司が言う


応援するように赤司の耳先を甘噛みすればフルリと小さな体が敏感に揺れた

アキラに体重を預けながら口を開く









「呼びだしたのは、また皆でお泊りしようっていいに来たんだ」










全員がぽかんとする



え?ここは試合は全力でやろうみたいなノリじゃないの?

誰もがそれに近い言葉を思い浮かべたが木端微塵に砕け散る






「へぇ。誰の家でやるつもりなんだ」

「勿論アキラの家だけど?ボクが料理全部つくるから…いいでしょアキラ?」






甘い声にオネダリ作戦

暫し見つめ合いやがてアキラが折れる







「…はぁ。コイツ等来ると楽しいけど後片付けが嫌なんだよなぁ」






特に未成年の癖に酒持ち込んで悪乗りする全員の後始末など上げるとキリが無いので口を閉じよう

アキラの気乗りしない発言に高身長組が次は酒持ち込まないから!などと言いながら食い下がる

悪乗りした黒子の姿まであるならアキラはこれ以上否定などできやしない

お手上げとばかり両手を上げ降参とお茶らけて言う







それに急にテンションのあがるキセキの世代










各高校の先輩がいたら大層びっくりするだろうか。キセキの世代が普通の中学生あがりの子供だという事実を見せつける様に喜ぶ姿をみせることを



嬉しそうに赤司が微笑みアキラへキスをせがむ

まだ足りないの、と耳元で囁くなんて高技術誰から教わったんだ


ああ。オレか。納得して苦笑

そっと顔を寄せれば赤い睫毛がオッドアイを覆い隠す。見慣れた端正な顔を見つめそっと笑みを浮かべたまま目を閉じキスをする







離した瞬間けたたましい電子音が複数鳴り響く

どうやら現メンバー達からの電話らしく帰ってこいとの内容が雷と共に各耳に落ちた


お叱りを受け解散となるがキセキの世代の顔は晴やかで試合の後に皆で集まる楽しみと今から全力で強敵と戦える悦びに満たされている












はじまりもおわりもこの人からの言葉から。そう身に沁みて理解してるキセキの世代は元キャプテンを見つめ全員の視線を一身に受けた赤司はそっと満足気に微笑む


中学の頃とは変わった意思を各々が持ち瞳に宿す。そんな現状をきっと昔の自分達は想像もしなかったのだろう













「それじゃあ皆。次に会うのはコートの上で」

















赤司が拳を軽く握り皆の前に突き出す



それは誰もが見た事のある行動で実際やっていた青峰と黒子は笑いながら




「パクられた」

「可愛いから許しましょう」

「だな」





スッと拳を握り突き出す





「俺コレすげーやりたかったんスよ!」

「ふーん。じゃ黄瀬ちんは夢叶ったってことで1回戦敗退だねー」

「酷ッ」

「紫原。黄瀬に余計な体力を使わない方がいい」

「とかいいながらみどちんも同類でしょ〜」

「なっば、」

「なーんだ。素直になればいいじゃないスかこのツンデレ!」









スッと拳が6つ空中に浮き残りひとつのスペースをあけて揃った

残りひとつ…アキラの分だ




皆の視線がアキラに集まり1人ずつの顔と表情を見て最後に黒子を見て自信満々に言い放つ













「勝つのは誠凛だ。お前等キセキの世代の泣き顔全国に広めてやる」

「ついでに腐の民専用ネットワークにも広めておきます」









背中に誠凛の名を背負う黒子とアキラ

いわば無名の挑戦者






宣戦布告を受けキセキの世代は王者の貫録を宿しながら挑戦者達に一言














「「「「やれるものなら」」」」






















コツンと7つの拳が合わさり手を振って笑顔でそれぞれのあるべき場所に足を進めた











バスケをやめなくてよかった

本当によかった

こんな日が来てくれると信じていたから









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