黒子のバスケ
□オリオンのままに 31Q
2ページ/3ページ
場所:アキラ宅の床の間
時間:部活直後
襖一枚向こう側の料理班はがやがやと騒ぎながらも闇鍋の準備を進めている
のんびりと新品のイグサの香りがほのかに漂い祖父母の古い家を思い出させどこか懐かしい
待機組の青峰は暇そうにあくびをしながらゴロリと炬燵の中で横になる
「だー…まだかよ。腹減ったぜ…闇鍋の具材自腹とか中学生のお小遣いの少なさ舐めてんのか藍澤ァ!」
マイちゃんの新刊発売日に金欠で買え無くなったらテメェ買えよ!
文句たらたらと愚痴る青峰。最後の最後に発案者のアキラに怒りをぶつけ本人に聞こえるように叫ぶ
実に悪質な嫌がらせだ
叫ばれた本人は襖の向こう側で「黙れ童貞」と叫び返し青峰の反対側の炬燵に座る黒子がブハッと吹き出す
青峰はのそりと起き上がり人を殺しそうな眼で不機嫌そうに未だ肩を震わす黒子を睨む
「なに笑ってんだ黒子。お前も童貞だろうが」
「僕は魔法使いになるので構わないです。ぶふッ」
「お前ェ」
普段は真顔を貫いたり変な宗教(腐)の連中から腐大臣と呼ばれ敬われていたりと変わった友人だが決して悪い奴ではない事くらい青峰も知ってる
普通の男友達として気に入ってる黒子が青峰を見てふわ、と微笑む
マイちゃん一筋の青峰が思わず魅入った瞬間
どき
「…(あれ。どきって何だよ。別に黒子が可愛いとかそんなん別に…)」
「…(!しまった。フラグが立ってしまいました…しかも赤!僕はホモじゃrny)」
微妙な雰囲気になった床の間
水色の澄み切った瞳は青峰の頭部をじっと見て冷や汗を掻いてる
黒子が笑うまでそこには無かった筈のフラグ(赤)がピンッと立っているのだ
恋愛を示唆するフラグが
かつてはアキラと赤司、灰崎と剛田にも見受けられたそれが現在呆然と黒子を見てくる青峰の頭上にピョンピョン跳ねながら主張してくる
どこからかひょこんひょこん、と音が黒子の耳に入り慌てて原因を探せばなんと頭上から音と赤いフラグの姿を発見
ピシッと固まる黒子
「(ヤバいですヤバいです何で青峰くんの相手が僕なんですかぁああ)」
腐の神さま腐の神さま!
Qどうすればいいんですかぁああ!!?
Aいいぞもっとヤれ
あ、終わりました僕
脳内で腐の神様との交信を終え救いの欠片すらない結末に黒子は顔を覆う
ぐすぐすと鼻を啜る音がして青峰がハッと我に返り黒子の隣へと移動し両肩を掴み向かい合わせる
「青峰くん…?(何で僕肩掴まれてるんですか。友情エンドでお願いします心から!)」
「…っ、あのよぉ…」
言い難そうに口籠らせほんの少しだけ黒子の肩を掴む力が強くなる
青峰らしく無い弱々しさに顔を覆う手を外しじぃっと潤む水色を上目使いで向けた
こくり
青峰の喉が鳴る
「__テツ、って呼んでいいか」
俺だけが。特別に呼んでいいか
きょとんと大きな眼が瞬く。告白される雰囲気に近かった為気を張っていた黒子は安堵の溜息をつく
__そうですよね。フラグ立ったくらいで直に告白する訳ないですよね!
このまま友情ルート確定で行きましょう!僕は永遠に処女でいれる未来が欲しいので
「いいですよ名前くらい」
「ホントか!ありがとな。テツ!」
パァァッと朗らかに笑う青峰。ぐわんぐわんと両肩を揺すって来たと思えば嬉しそうに抱き締めてくる
ビクッ
「!!!(ちょぉぉぉっ離れてください!鳥肌がぁぁっ)」
「テツ、テツ。アキラのバカ野郎はお前のこと特別なあだ名で呼ぶだろ?俺わりと羨ましいって思ってたんだぜ?」
「へ、ぇ…(ヤバいです。拒絶反応半端ないんですけど。体中プルプルです)」
「なぁテツ。お前ずっと笑っていろよ。さっきマイちゃん並みに可愛いかった」
可愛い。一般ピーポーである中学男子生徒のタブー第2位である
黒子が赤司に可愛いと言えば頬にキスされるかハグされるトラウマワードでもある。しかし赤司が黒子に構えばアキラも何処からかホイホイされてくるらしくネタ投下の大チャンスだ
忍耐力と防御力を高め頻繁にトラウマワードを発する黒子を2人は物理的に距離を縮め接してくるため強制的に初が改善傾向にある。実に不覚だ
あばばば、と黒子が顔に出さずに慌て青峰が信じられないほど甘えた声色で「やっと呼べた」だの「テツ。こら返事しろぉ」だの…異空間か
そんな空気を切り裂く空気の読めない奴がガラっと荒く襖をあけ姿をみせる
・