黒子のバスケ
□オリオンのままに 30Q
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深夜
珍しく赤司が自宅へ帰宅した1人がやけに寂しい夜にアキラのスマホに1本の電話がかかる
基本的に相手別にライトの色や着信音を変えて無い為誰からの電話か分らないがなぜか嫌な予感がする
とるかとらないか…迷う。数コール鳴りやがて役目を終えた様に鳴り止む
ディスプレイを覗きこめば見た事のある名前が記載されており嫌な予感が的中していた
うげ、父さんじゃん
隠しもせず眉を顰め再びかかってきた電話に渋々出る
「何。父さん」
「うわ冷たッ久々のダッドからのラブコールちゃんと受け取って!」
「…愛してるよ!ダディ!…これでいい?」
「何だい反抗期かい?前半可愛いから許すけどぉぉぉ。しかもアキラちゃん声変わりしたの!?ダッドに似て来たねぇ」
「そりゃ父さんの血を受け継いでるからな」
「Dad」
「…はいはい。ダッド。別に父さん呼びだっていいじゃん」
「だってーアキラちゃんにはダッドかダディ呼びの方が似合う!ハハハ!」
学校で普段見せてる態度や言葉の半分はこのハイテンションな父親の影響だろうか
約半年ぶりの会話だというのに決して嫌いでは無い父との電話には何か重大な事を伝えに来てると自分の直感が叫んでいた
その所為で父からの好意もどこかあしらってしまう。嫌な予感が消えない所為だ
さすがにそんな息子の様子に気付き本の少しだけトーンダウンをして本題に入ってくれた
陽気な性格をしてても察する能力に長けているのだからすごい父親だ
「そっちにアキラちゃんが留学という形で行って半年経ったけど…アメリカで何事もなかったか、と言われればNOとしかいえないのね」
「なんか問題あった訳?」
「大アリさ!ハハハ!アキラちゃん目当てのパパラッチの襲撃だとかダッドがオリオンに間違われたりだとか!ハハハッ身長見ようね皆」
「俺だって身長伸びましたー。170越えたし」
「ワァオ。ダッドと20cm差じゃないか。次会うのが楽しみだよ」
高身長でハイスペックな父
無意識にアキラは父の面影を追いかけているのかもしれない
アキラの全てを愛し受け入れ偏った愛情を注ぎ続ける父が息子の心に安置として深く存在しているのだから自然な形なんだろうか
…もしかしたらわざと”そう”なるように愛情を注いでいるのかもしれないが本人じゃ無い限り想像でしかない
物心付く前から偏った愛情を受け続けたアキラにはそれが当たり前で普通なのだからオカシイとは気付きもしない
家庭自体がオカシイモノだったから判断材料が欠けているのだが今のアキラにとっては果てしなくどうでもいいものだろう
素直に自分の成長を褒めてくれる父に顔を綻ばせる
「まぁ暫く会うつもりはないんだけど」
「アキラちゃんたら酷いッあ、会うで思い出したんだけどね…ちょーっとマズイ出来事起きそう」
「はぁ…やっぱり。ダッドからの電話って嫌な予感が6割だから出たくないんだ」
「ちょっと!オレは愛する愛息子とヘビーでダークな内容でも嬉しいんだからそう言わないでー!」
「いつも重すぎるんだよ」
取引先の社長の視線本気で気持ち悪いから相手の会社潰しちゃったよ!ハハハ!…など
振られた友人を慰めたらスーツを鼻水で汚されて倍で請求しただの
オリオンに間違われて熱烈にアプローチ受けたが本人じゃないと知られたら罵られて惚れ掛けただの
…とにかく重いのだ
なにかが重いのだ。それを嬉々として報告してくる父が嫌いでは無いので会話に華を咲かせる努力は身につけたつもりだ
「もー!冷たいぞアキラちゃんッそんな君に悪いお知らせを2ついってやる」
「2つも?」
「だってアキラちゃんたらオレに冷たいんだもん。八つ当たりだよ」
「…」
どっちが大人か話を聞く限り全員がアキラを指名してくれるだろう
ぷんぷん拗ねた34歳♂が口を尖らせながら悪い知らせを落す
「1つ目が、中学飛び級システムのテストプレイヤーにダッドのアキラちゃん推薦して…とある場所にちょーっと圧力かけといたってこと」
現在日本では飛び級が認められていない
そのテストプレイヤーに推薦されただとか大人の圧力をかけただとかアキラ本人的には大した事ではない
決して飛び級が義務化された訳でなく自分の好きな時にそのシステムを駆使し単位を取得すれば良いのだ
案外今の生活にも人間関係も気に入っているし彼等と共に卒業するのも悪くないと思っている
パパッと暇な時にでも単位を少しずつとればテストプレイヤーとしても十分な材料元となる筈だ
父が2つ目の悪い知らせを言う前に脳内で結論付け処理する
これが悪いお知らせとは思えないが…恐らく次のが本題なのだろう
気を引き締め体を前屈みにしたまま電話口の声に意識を向けた
「2つ目がねー…Jrがアキラちゃんの情報を本気で集めだしてるってコトだねハハハ!あの子が!本気でね」
見つかっちゃうかもね。どーしたい?
心臓が止まる、無意識に息を止める
空気が止まる、時間が止まる
思考が止まる
何もかもが止まった感覚
いや、違う
止まってるのはボクだ
凍りついてるのはボクだ
覚悟をしないで彼の前から消えたボクが勝手に彼の影に恐怖している
そんな動揺を隠し切れないアキラに気付きいつもの様に父がハイテンションのまま落ち着かせる
「こらこら、息してるかい?」
「__ッあ、ああ。今、した」
「__会いたくない?”リゲル”くんに」
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